コラム

2024/12/25 コラム

弁護士介入で変わる損害賠償交渉のポイントと増額の理由

Q&A

Q: なぜ、弁護士を入れた場合と入れない場合で、慰謝料などの賠償額に差が出るのでしょうか?

保険会社は独自の示談基準を用いて、被害者への支払いをなるべく低く抑えようとすることが多く、法的な専門知識がないままその提示を受け入れてしまうと、本来得られるはずの賠償より低い金額で示談が成立することがあります。一方で、弁護士が介入すると、裁判実務で用いられる基準や立証手続を適切に踏まえた交渉が可能となり、結果的に賠償額が増額することが多いのです。

本稿では、その具体的な理由や背景、さらには弁護士に相談するメリットについて詳しく解説します。

はじめに

交通事故や死亡事故など、深刻な被害を受けた場合、被害者やそのご家族は大きな精神的・経済的負担を抱えています。そうした中、示談交渉や損害賠償請求は、被害者にとって複雑な手続であり、保険会社との交渉においては不利になりがちです。

弁護士は、法的知見と経験を活かして、適正な賠償額を確保するための交渉や証拠収集を行います。本稿では、弁護士に依頼することで得られるメリットや、具体的な手続のポイントを解説します。

以下では、まず「弁護士を入れない場合と入れた場合の賠償額の違い」について解説し、次に「なぜ保険会社と弁護士の示談交渉では基準が異なるのか」をご紹介します。その後、「証拠や立証作業の重要性」と「専門的な主張の組み立て方」の観点から、弁護士が介入することの効果をご説明します。

目次

  1. 弁護士介入が損害賠償額に影響する理由
  2. 保険会社独自基準と裁判基準の違い
  3. 立証責任と証拠収集の重要性
  4. 弁護士が行う主張と交渉戦略
  5. 弁護士に相談するメリット
  6. 事例から考える増額の可能性
  7. 手続の流れとポイント
  8. まとめ

1. 弁護士介入が損害賠償額に影響する理由

交通事故や死亡事故などの損害賠償請求では、当事者間が合意すればそれで決着となります。被害者が法律的な判断基準や相場観を知らなければ、保険会社から提示される金額を「こんなものかもしれない」と思い、応じてしまうケースが少なくありません。しかし、実際の裁判所が採用する基準は、保険会社独自の基準よりも被害者に有利な場合が多く、それを知らずして示談成立に至ると、本来得られるはずの賠償額より少ない金額で納得してしまうリスクが生じます。

弁護士は、過去の裁判例や法的な基準を踏まえて「このケースならこれくらいが適正」と判断することができます。また、保険会社との交渉において、弁護士は「裁判を行った場合にはこの程度の金額が認められる可能性が高い」といった法的根拠を示すことで、相手方にとって不利な訴訟リスクを明確化し、結果的に示談額を引き上げることが可能になります。

2. 保険会社独自基準と裁判基準の違い

保険会社は支払額をできるだけ抑えたいと考える傾向にあります。そのため、保険会社は自社独自の示談基準を用いて、裁判基準よりも低いラインで被害者と合意しようと試みます。たとえば、慰謝料や逸失利益(将来の収入減に対する賠償)などは、裁判所が一般的に認める金額よりも低めに提示されることが少なくありません。

一方、裁判で用いられる基準(いわゆる「赤い本」「青い本」などに示される基準や過去の判例集)は、学説や積み重ねられた判例により一定の妥当性が認められています。弁護士は、こうした裁判基準を根拠に交渉することで、保険会社独自基準ではなく、より公正で客観的な基準に近い賠償額を目指すことができます。

3. 立証責任と証拠収集の重要性

裁判になれば、保険会社側も弁護士に依頼して争ってきます。その際、問題となるのが「立証責任」です。交通事故や死亡事故の損害賠償請求では、被害者側が「これだけの損害があった」「後遺障害がある」「逸失利益がある」といったことを証拠に基づいて示さねばなりません。証拠とは、診断書、後遺障害等級認定の資料、収入証明書、就労可能性を示す資料、過去の判例など、多岐にわたります。

これらの証拠収集には時間と手間がかかり、法的なポイントを押さえた整理や主張が必要となります。弁護士を入れずにご本人で証拠を揃えようとすると、不足や不備が生じる可能性が高く、結果的に賠償額が減ってしまうこともあります。

弁護士は、立証すべきポイントを的確に抽出し、それに応じた証拠を整えるノウハウを有しています。これが結果的に、裁判基準に近い、またはそれ以上の適正な賠償額を得るための重要なカギとなります。

4. 弁護士が行う主張と交渉戦略

弁護士は法律の専門家として、以下のような観点から交渉戦略を組み立てます。

  • 法的根拠の提示
    適正な賠償金額を示す裁判例や学説を根拠として交渉を行い、相手に法的リスクを認識させます。
  • 主張の優先順位付け
    被害者にとって有利となる主張を効果的な順番で提示し、示談交渉を優位に進めます。
  • 相手側の論点分析
    保険会社側の反論や弱点を見抜き、その対応策を練り込みます。
  • 客観的評価の提供
    被害者が感情に流されることなく、現実的な落としどころを見定めるためのアドバイスを行います。

これらの戦略を総合的に活用することで、示談交渉は単なる金額の押し引きではなく、「いかに裁判実務に近い、またはそれ以上の妥当性を提示できるか」という本質的な勝負になります。その結果、弁護士介入前よりも有利な条件で示談が成立しやすくなり、賠償額が増えることが期待できます。

5. 弁護士に相談するメリット

弁護士に相談・依頼することには、以下のようなメリットがあります。

  1. 正しい法的評価の獲得
    弁護士は過去の判例や基準を踏まえて「適正な」金額を判断します。これにより、保険会社から提示された独自基準に惑わされず、本来受け取るべき賠償金額の目安を知ることができます。
  2. 交渉力の強化
    法的根拠を示し、論理的な主張を組み立てることで、保険会社に対する交渉力が格段に向上します。
  3. 煩雑な手続きの代行
    医療記録や事故状況、就労可能性に関する証拠収集、後遺障害等級認定手続きなど、専門的で煩雑な作業を弁護士が代行することで、被害者や遺族は精神的負担を軽減できます。
  4. 時間と労力の節約
    被害者自身が証拠収集や書類作成を行う場合、膨大な時間と労力がかかります。弁護士に任せることで、その時間を治療やリハビリ、生活の再建に充てることができます。
  5. 将来リスクへの備え
    弁護士は将来的な後遺障害や逸失利益も考慮して交渉します。短期的な解決だけでなく、長期的な視点で被害者の暮らしを支えるための適正な賠償を追求します。

これらのメリットを総合すると、弁護士に相談することは、経済的・精神的な両面で被害者側に利点が大きいことがイメージできるかと思います。

6. 事例から考える増額の可能性

実際の事例では、弁護士が介入することで、当初保険会社が示した金額よりも大幅に増額されたケースが報告されています。たとえば、

  • 慰謝料の増額
    提示額が100万円程度であったところ、弁護士介入後に200万円以上に増えた例。
  • 逸失利益の確保
    将来的な収入減が考慮されず、低く見積もられていた逸失利益が、弁護士の丁寧な立証により数百万円単位で上乗せされた例。

これらは一部の例ですが、弁護士が適切な証拠を揃え、法的根拠を提示し、交渉戦略を踏まえて動くことで、被害者に有利な条件で示談が成立する可能性は実務上多く存在します。

7. 手続の流れとポイント

弁護士を入れる場合、一般的な流れは以下の通りです。

  1. 初回相談
    被害者は弁護士法人長瀬総合法律事務所など、専門の法律事務所へ相談し、自分の置かれた状況や相手方保険会社の提示内容を共有します。
  2. 受任と検討期間
    受任後、弁護士は提示額や事故状況、後遺障害の有無などを総合的に検討し、適正な賠償額を算定します。
  3. 証拠収集と主張整理
    必要な医療記録や収入証明などの証拠を収集・整理し、主張を組み立てます。
  4. 示談交渉: 弁護士が保険会社と直接交渉し、増額や条件改善を目指します。
  5. 合意成立または訴訟提起
    示談での合意が難しければ、訴訟に移行し、最終的な判断を裁判所に委ねます。

この一連の手続では、適正な戦略と準備が重要であり、法的知識と経験を持つ弁護士が関与することで、より有利な結果が期待できます。

8. まとめ

本稿では、「なぜ弁護士を入れると慰謝料や賠償額が増えるのか」を中心に、その背景となる保険会社独自基準と裁判基準の違い、証拠立証の重要性、弁護士による専門的な主張・戦略、さらには弁護士相談のメリットなどについて解説しました。

弁護士が関与することで、被害者は裁判所基準に近い(またはそれ以上の)適正な賠償額を獲得しやすくなります。また、弁護士による専門的な支援が、複雑な手続や心理的ストレスを軽減し、より公正な結果につながります。

このように、弁護士のサポートは、単なる「増額」のためだけでなく、被害者や遺族が将来に向けて前向きな一歩を踏み出すための大きな助けとなります。

弁護士を入れることで、交渉基準や証拠立証のプロセスが大きく改善され、結果として慰謝料や賠償額の増加が見込まれます。法的知識と戦略、証拠収集能力を兼ね備えた弁護士が介入することで、被害者は自分が本来受け取るべき適正な補償を得ることが可能になります。また、その過程で被害者の精神的負担も軽減され、将来を見据えた対応が進めやすくなります。ぜひ、悩んでいる方は弁護士への相談を検討してみてください。

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