2025/02/08 介護事故
介護施設での窒息事故と損害賠償:誤嚥リスクとケア体制の改善ポイント
はじめに
高齢者や要介護者は、嚥下機能が低下しているケースが多く、食事や飲み物をうまく飲み込めず、誤嚥による窒息事故が起こりやすいと言われています。介護施設や在宅介護の現場でも、「食事中に利用者が喉を詰まらせてしまい、呼吸困難に陥る」「飲み込みづらい食形態を与えたために誤嚥性肺炎を発症した」など、重大なトラブルが後を絶ちません。時には、短時間で命に関わる深刻な結果を招くこともあります。
本稿では、介護施設における窒息事故をテーマに、事例の特徴と法的責任、そして事故を未然に防ぐために必要なケア体制や管理責任について解説します。事故が起きた際の施設の対応や、被害者・家族の方がとるべき行動、弁護士への相談メリットなども含め、総合的な情報を提供します。
Q&A
Q1:窒息事故はなぜ介護施設で起きやすいのでしょうか?
要介護者は嚥下機能や咀嚼力、体力が低下しているため、普段の食事でも喉を詰まらせたり、誤嚥しやすい傾向があります。また、認知症などで自分の状態をうまく伝えられない利用者も多く、食事形態の選択や介助方法を誤ると窒息事故に繋がりやすいです。
Q2:介護施設での窒息事故に施設側の責任は問われるのですか?
施設には利用者が安全に食事をとれるよう配慮する安全配慮義務があります。嚥下障害のある方に通常食をそのまま出したり、適切な見守りや介助がなかったりした結果、事故が起きた場合、施設の管理責任や不法行為責任が認められる可能性が高いです。
Q3:具体的にどのような行為が過失とされますか?
代表例としては、
- 個々の嚥下機能や食事形態の指示(ミキサー食、刻み食など)を無視して一般食を与えた
- 食事介助時の姿勢管理が不十分(ベッド上での中腰姿勢など)
- 夜勤や人手不足の時間帯に誤嚥サインを見逃した
- 手早く片付けようと急かし、十分なペースで食事ができなかった
などが挙げられます。
Q4:もし家族が窒息事故で施設に責任を問う場合、どんな損害を請求できますか?
治療費や入院費、通院費、後遺症が残った場合の逸失利益や介護費、さらに慰謝料などを請求の対象とし得ます。事故の結果、利用者が重い後遺障害を負ったり死亡した場合は、高額の賠償が認められることがあります。
Q5:施設はどのように事故を防ぐことができるでしょうか?
主な対策として、
- 嚥下機能評価を専門家に依頼し、個々に適した食形態を設定
- スタッフ教育:誤嚥リスクや緊急時対応の研修
- 食事介助マニュアル:姿勢管理や声かけ、スプーン一口量の指導
- 見守り体制の強化:特に嚥下リスクの高い利用者には、食事中もスタッフが近くでフォロー
などが挙げられます。
解説
施設の安全配慮義務と管理責任
介護施設は、入所者一人ひとりの身体機能や嚥下状態を把握し、それに応じた食事形態や介助プランを提供する義務があります。厚生労働省のガイドラインや施設独自のマニュアルに則り、リスク管理を徹底することが求められます。
- 嚥下評価シートや個別ケアプラン
- スタッフ間の申し送りと実際の運用の整合性
- 定期的な見直し(嚥下機能は変化するため)
これらが怠られていた結果、予測可能な窒息事故が起きた場合、施設の過失が厳しく問われることになるでしょう。
事故後の手続き
- 医療機関での処置・診断
窒息事故によって救急搬送された場合、後遺障害が残るかどうかは医師の診断や検査結果が鍵となります。 - 事故報告書・ケア記録の確認
施設が作成する事故報告書や利用者の日々の記録を精査し、どのような食事形態・介助体制だったかを確認します。 - 示談交渉・裁判
施設の過失を家族が追及し、損害賠償を請求する場合は、保険会社を交えた示談交渉が一般的ですが、不調であれば裁判で争われることもあります。
弁護士に相談するメリット
- 専門家による過失立証
窒息事故が本当に施設の過失で起きたのか、利用者の健康状態や介助計画が適切だったのかなど、客観的な証拠を弁護士が整理・分析します。 - 損害項目の包括的算定
治療費だけでなく、逸失利益や後遺障害の介護費、慰謝料などをすべて含めて適正な賠償額を算定します。 - 施設や保険会社との交渉代理
施設側が賠償責任を否定するケースや、保険会社が提示する示談金が低い場合、弁護士が法律的根拠を提示して粘り強く交渉を行います。 - 裁判手続き対応
示談が決裂した場合、裁判へと進みます。弁護士が訴状・準備書面を作成し、口頭弁論や証人尋問を進めるため、依頼者の負担とストレスが軽減されます。
まとめ
窒息事故は、高齢者や要介護者にとって命の危機となり得る深刻なトラブルです。介護施設では、利用者の嚥下機能を把握し、適切な食事形態や十分な見守り体制を整えることで、リスクを大幅に低減できるとされています。しかし、実際には人員不足や教育不足などの要因から誤った食事提供や介助不備が生じ、取り返しのつかない結果を招いてしまうことがあります。
万が一、家族がこうした窒息事故の被害に遭い、施設側の説明に納得できない場合は、弁護士に相談して損害賠償を検討することが望ましいでしょう。弁護士法人長瀬総合法律事務所では、介護施設での窒息事故に関する問題解決をサポートし、適切な賠償と再発防止策を目指すためのお手伝いを行っています。
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