学校事故

2025/04/15 学校事故

学校での感染症拡大と賠償問題:集団感染リスクと安全配慮義務を見直す

はじめに

インフルエンザやノロウイルス、新型コロナウイルスなどの感染症学校で流行すると、一気に多数の児童・生徒や教職員が感染するクラスターが発生し、周囲にも感染が波及する可能性があります。学校は学習や部活動など集団活動の機会が多いため、衛生管理症状把握早期隔離・休校などの対策を怠ると、短期間で広範に被害が拡大してしまうリスクがあります。本稿では、学校での感染症拡大に関する法的責任や事故後の対応について解説し、保護者や学校がどう備えるべきかを考察します。

Q&A

Q1:学校で大量の罹患者が出た場合、学校に損害賠償を求められるのですか?

学校には生徒が安全・健康に過ごせるよう安全配慮義務があり、感染症が流行しやすい時期に消毒や換気、体調管理を怠った結果、被害を防ぎ得たにもかかわらず拡大させたと認められる場合、学校(設置者)の過失が問われることがあります。ただし、感染症は不可抗力面も大きく、因果関係の立証が課題となるケースが多いです。

Q2:具体的な対策として、学校は何をしなければならないのでしょうか?

一般的には、

  • 体温測定や健康観察の徹底
  • 手洗い・換気・消毒など衛生指導の強化
  • 発熱者や症状のある生徒の早期隔離
  • 保健所や教育委員会との連携
  • 必要に応じた学級閉鎖やオンライン授業
    などが求められます。

Q3:集団感染で重症者や死亡者が出た場合、家族が学校に賠償請求できるのでしょうか?

学校側に明らかな管理不備や情報隠し、隔離対応の遅れなど過失があれば、因果関係を立証したうえで賠償請求が認められる場合があります。ただし、ウイルス感染は経路が多様で立証が難しいケースもあり、法律上のハードルが高いことも事実です。

Q4:もし学校が適切な対策を行っていたにもかかわらず、感染が拡大したらどうなるのでしょう?

十分な対策を講じていた(国や自治体のガイドラインに準拠、消毒や換気を徹底、適切な休校措置)にも関わらず、不可抗力的に拡大した場合は学校の過失が否定される可能性が高いです。

Q5:保護者ができる事故防止策にはどんなものがありますか?

子どもの体調を毎日チェックし、発熱や咳などの症状があれば登校を控えさせる(自己判断で早退・欠席も含む)、学校に対して疑わしい症状をすぐに報告するなど、家庭と学校の情報共有がポイントです。

解説

感染症拡大と学校の安全配慮義務

学校で集団感染が生じる背景には、

  • 教室や部活動での密集
  • 長時間同じ空間に大人数が滞在
  • 手洗いや換気の習慣徹底不足
    などが挙げられます。学校は厚生労働省や文部科学省、自治体の指針を参照しながら、休校や学級閉鎖の基準を設けるなど柔軟に対応する義務があります。これを怠り、明らかに発症者が増えているのに通常授業を強行し、被害が拡大したなら、学校の過失が認められやすくなります。

事故(感染症拡大)後のプロセス

  1. 医療機関での診断
    感染症が疑われる場合、医療機関で検査・治療を受け、診断書を取得して症状を把握。
  2. 学校・自治体への報告
    公立校なら教育委員会、私立校なら学校法人に状況を伝え、学校の感染対策を確認する。
  3. 示談・裁判
    学校の過失を認めて賠償を提示するケースもあるが、否定されれば法的手段で争う場合がある。因果関係の立証が課題。

弁護士に相談するメリット

  1. 過失・因果関係の検証
    学校の衛生管理や発症後の対応がガイドライン通りだったか、外部専門家の意見も取り入れながら整理。
  2. 損害項目の適正化
    治療費や入院費だけでなく、感染による後遺症(肺機能低下など)が認められれば、その将来の損害も評価できる。
  3. 交渉・裁判での代理
    教育委員会や保険会社が相手の場合、個人での交渉は限界があるが、弁護士が法的根拠を示して話し合いを円滑化。
  4. 再発防止策の合意
    示談や和解条項に、感染対策の強化やマニュアル整備を含めることで、同様の被害を防ぐ。

まとめ

学校での感染症拡大は、集団生活の特性から一気に拡散し、児童・生徒のみならず家族へも波及するリスクがあります。学校側の安全配慮義務には、衛生管理や情報共有、発症者の早期隔離、必要時の休校などが含まれ、これらを怠っていたために拡大を招いたと認められる場合、学校(公立なら自治体)の過失責任が問題となります。事故(集団感染)後は医療的対応を行うと同時に、学校の対策や経緯を確認しましょう。弁護士法人長瀬総合法律事務所では、学校事故や感染症拡大にかかわる紛争解決において、依頼者の安心と適正な解決を支援します。


 

【弁護士法人長瀬総合法律事務所のYouTubeチャンネル 】

企業法務に関する問題を解説したYoutubeチャンネルを運営しています。
ぜひご視聴・ご登録ください。 

リーガルメディアTVはこちら

【メールマガジンのご案内】

無料WEBセミナー開催のお知らせや、事務所からのお知らせをメールで配信しています。
ぜひこちらのご登録もご検討ください。

メールマガジンの登録はこちら

© 弁護士法人長瀬総合法律事務所 損害賠償専門サイト