2025/04/17 介護事故
介護職員のミスによる事故と法的責任:安心できるケアを受けるために知っておきたいポイント
はじめに
介護施設や在宅介護で、高齢者や要介護者を支えるのは介護職員ですが、忙しさや人手不足、知識不足などの背景から、人的ミスが原因の事故が絶えません。誤薬や誤嚥、移乗介助時の落下など、利用者に深刻なダメージを与える可能性があるため、施設運営者には職員の教育や業務体制の整備が強く求められています。本稿では、介護職員のミスが引き起こす事故の原因と法的責任、事故発生後の流れ、そして弁護士に相談するメリットをご紹介します。
Q&A
Q1:介護職員のミスが原因で利用者が怪我をした場合、個人に対して直接賠償を求められるのでしょうか?
一般的には、介護施設や事業所の運営母体(法人など)が使用者責任を負います。利用者と介護職員との間に直接的な契約関係はないため、まず事業所を相手に不法行為責任を問う形が通常です。職員個人の重大な過失が認められる場合でも、利用者側は事業者に請求し、事業者が職員に求償するのが一般的な流れです。
Q2:どのようなミスが多いのですか?
例として、
- 誤薬(薬の名前や量、タイミングのミス)
- 食事介助時の不注意(誤嚥や窒息事故)
- 移乗介助時の転倒・落下
- 記録漏れや連絡不足(体調変化を見逃す、処置が遅れる)
などが報告されています。
Q3:介護職員のミスを防ぐために施設は何をすべきでしょうか?
スタッフ研修やダブルチェック体制の整備など、ヒューマンエラーを軽減する仕組みが不可欠です。具体的には、
- 誤薬防止のチェックリスト
- 二人体制での移乗介助
- 定期的な勉強会や事例共有
- 業務記録システムの活用
などが考えられます。
Q4:事故後、家族が取るべき第一歩は?
利用者の安全と健康を最優先し、医療機関で診察し、診断書を取得して障害や治療費を明確にすることです。その後、事業所が作成する事故報告書やケア記録を確認し、ミスの経緯を把握。納得できない場合は弁護士へ相談し、示談・裁判を視野に入れるのが得策です。
Q5:示談交渉が進まない場合でも、法的に解決できるのですか?
もちろん可能です。示談で合意に至らない場合は、不法行為(民法709条)や使用者責任(民法715条)を根拠に裁判を起こし、事業所の過失や損害額を争うことができます。弁護士が証拠や書面作成を行い、依頼者の代わりに法的手続きを進められます。
解説
介護職員のミスと施設運営者の責任
介護施設や在宅サービスを提供する事業所は、スタッフの行動を監督し、利用者の安全と安心を確保する管理責任を負います。職員一人ひとりのミスをゼロにするのは難しいですが、事故予防策(研修・マニュアル・管理システム)を十分に整備していれば、被害を最小限に食い止められる可能性が高まります。もし、こうした予防策が全く講じられていなかったり、形骸化していた結果、利用者が負傷したなら、事業所の過失が認められる可能性があります。
事故後の流れ
- 医療機関での診断
怪我や体調不良があれば即受診し、治療計画や予後を把握。 - 事業所の事故報告書確認
どのように事故が起きたか、スタッフ配置は十分だったか、ケアプランと実際の介助内容が合っていたかなどを確認。 - 示談・裁判
施設側が過失を認めれば示談へ、不調なら裁判を通じて賠償を争う。
弁護士に相談するメリット
- 事実立証の専門サポート
職員マニュアルやケア記録、スタッフの証言などを収集し、法的にミスを立証しやすい形に整理。 - 損害項目の網羅
治療費や通院費だけでなく、後遺障害や介護度アップに伴う費用などを多面的に見積もる。 - 事業所・保険会社との交渉代理
保険会社が介入する場合、専門知識を持つ弁護士が対応することで被害者に有利な交渉を進めやすい。 - 再発防止策
示談合意にケア体制の改善やスタッフ研修強化など、施設側の取組を明記して再発を防ぐ。
まとめ
介護職員のミスによる事故は、要介護者や高齢者にとって大きな被害をもたらし、その後の生活や健康状態を大きく損なうリスクがあります。施設運営者は使用者責任や安全配慮義務を負っており、誤薬や介助失敗といった防ぎ得るトラブルが発生した場合、充分な管理体制を整備していなかったとして過失を問われる可能性があります。
事故後に不十分な対応や補償を受けた際は、まず医療機関での治療を優先し、同時に弁護士へ相談して示談交渉・裁判手続きを検討することで、適正な賠償と再発防止につなげやすくなります。弁護士法人長瀬総合法律事務所では、依頼者の不安と負担を軽減するサポートを行っています。
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