2025/08/29 コラム
婚約破棄の慰謝料相場と請求できるケース・できないケース
はじめに
結婚の約束をし、将来を誓い合ったパートナーから一方的に「婚約」を破棄された場合、その精神的ショックは計り知れません。このような心の傷に対して、相手に「慰謝料」を請求できる可能性があります。しかし、「結婚しよう」という言葉があれば、どんなケースでも慰謝料を請求できるわけではありません。請求が認められるには、いくつかの法的なハードルをクリアする必要があります。
この記事では、婚約破棄で慰謝料を請求できるケースとできないケース、慰謝料の相場、そして慰謝料以外に請求できる費用について解説します。
大前提:法的に有効な「婚約」の成立とは?
慰謝料請求の第一歩は、二人の間に法的に有効な「婚約」が成立していたと証明することです。実は、法律上、婚約の成立に特定の形式は要求されていません。過去の最高裁判所の判例では、結納や両家の顔合わせといった儀式がなくても、当事者間で真摯な結婚の合意があれば婚約は成立すると示されています。
しかし、法廷で婚約の成立を争う場合、「言った、言わない」の水掛け論になりがちです。そのため、口約束だけでなく、その約束が真摯なものであったことを示す客観的な事実が極めて重要になります。法的に十分な証拠と見なされるか、それとも単なる恋愛関係の延長と見なされるかの分かれ目は、この客観的な証拠の有無にかかっています。
婚約の成立が認められやすい客観的な事実
- 結納を交わした
- 婚約指輪の授受があった
- 両家の親に挨拶を済ませ、結婚の承諾を得ている
- 結婚式場の予約や、具体的な打ち合わせを進めている
- 新婚旅行の予約をしている
- 新居の賃貸契約や購入を進めている
- 会社の同僚や友人など、周囲に婚約者として紹介している
これらの事実を証明できる写真、メール、契約書、領収書などの証拠を揃えておくことが、請求の土台となります。
慰謝料を請求できるケース:正当な理由なき一方的な破棄
婚約が成立していることを前提として、相手が「正当な理由なく」一方的に婚約を破棄した場合に、慰謝料の請求が認められます。「正当な理由」とは、社会通念に照らして、婚約の継続を期待することが困難であると客観的に認められる事情を指します。
以下は、「正当な理由」とは認められにくい、典型的な婚約破棄の理由です。
- 心変わり
「他に好きな人ができた」「結婚する気がなくなった」。 - 相手の浮気・不貞行為
婚約を破棄する側が、他の人と肉体関係を持った場合。 - 親の反対
特に、差別的な理由(例:被差別部落出身など)による親の反対は、正当な理由として全く認められません。 - 性格の不一致
具体的な理由なく、漠然と「性格が合わない」と主張する場合。
慰謝料を請求できないケース:破棄に「正当な理由」がある場合
一方で、婚約破棄の原因があなた自身にある場合は、相手が婚約を破棄することに「正当な理由」があると判断され、慰謝料を請求することはできません。それどころか、逆に相手から慰謝料を請求される可能性もあります。
正当な理由と認められうる主な事情
- あなたの浮気(不貞行為)
婚約後にあなたが他の異性と肉体関係を持った場合。 - あなたからのDV・モラハラ
暴力や精神的虐待があった場合。 - 重大な事実の隠蔽
多額の借金、重大な犯罪歴、経歴詐称などを隠していた場合。 - 性的な問題
正当な理由なく性交渉を拒否し続けた、あるいは性機能に重大な問題があることを隠していた場合。 - その他
結婚式直前に失踪する、社会常識を著しく逸脱した言動があるなど、信頼関係を根本から破壊する行為があった場合。
慰謝料および損害賠償の相場
婚約破棄による損害は、「精神的損害」と「財産的損害」の二つに分けて考えます。
慰謝料(精神的損害)の相場:50万円~200万円
婚約破棄による精神的苦痛への慰謝料は、50万円~200万円が裁判上の相場とされています。300万円を超えるケースは、妊娠・出産が絡むなど、悪質な事情がある場合に限られます。金額は、以下のような事情を総合的に考慮して決まります。
- 交際期間や婚約期間の長さ
- あなたの年齢
- 婚約破棄の理由の悪質性
- 妊娠や中絶、出産の有無
- 結婚準備の進捗度合い
- 婚約を機に仕事を辞めてしまったか(寿退社)どうか。
財産的損害
慰謝料とは別に、婚約したことで実際に支出した費用も請求できます。
- 結婚式場のキャンセル料
- 新婚旅行のキャンセル料
- 新居の契約金、手付金、家賃など
- 婚約指輪の購入代金
- 寿退社した場合の逸失利益(本来得られたはずの給与など)。
これらの費用を証明する契約書や領収書は、必ず保管しておきましょう。
まとめ
婚約破棄で慰謝料を請求するためには、「婚約の成立」と「相手による正当な理由なき破棄」という2つの点を、客観的な証拠で証明する必要があります。一方的に婚約を破棄され、どうすればよいか分からない場合は、まずは弁護士にご相談ください。あなたのケースで法的な請求が可能か、どのような証拠が必要か、専門家の視点から的確にアドバイスいたします。
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