2025/01/24 学校事故
いじめ被害による損害賠償請求と学校の対応:保護者が知るべき法的責任と解決手段
はじめに
いじめは、身体的・精神的に大きなダメージをもたらす深刻な問題です。子どもがいじめに遭うと、学習意欲の低下や不登校、精神疾患の発症など、将来にも悪影響を及ぼしかねません。さらに、いじめ被害による損害賠償をめぐっては、加害生徒やその保護者だけでなく、いじめを放置したとされる学校側に対しても責任追及がなされるケースがあります。
本稿では、いじめ被害に関する法的責任の考え方、具体的な請求の流れ、そして実際の被害者がとるべき対処法を解説します。子どもの心身を守るためにも、いじめ問題に直面した際には正しい知識とサポートが不可欠です。
Q&A
いじめ被害で損害賠償請求をする場合、まずは誰に対して請求するのでしょうか?
加害生徒の保護者に対して、民法上の監督義務違反(民法714条)を根拠に請求することが考えられます。また、学校がいじめを放置していたなどの過失が認められる場合は、学校や教育委員会に対して損害賠償を請求することも考えられます。
いじめを証明するにはどのような証拠が必要ですか?
いじめの事実を示すLINEやSNSのやりとり、メール、メモや日記、目撃者の証言、教師に相談した記録など、できるだけ多くの証拠を集めることが重要です。特に、学校に相談しても対応してもらえなかった場合は、その経緯を示す文書や録音も役立ちます。
学校がいじめを把握していたのに適切な対応をしなかった場合、どのような責任が問われますか?
学校には「安全配慮義務」や「いじめ防止対策推進法」に基づく適切な対応義務があります。これを怠った場合、学校設置者(自治体や学校法人)に対して損害賠償を求めることが可能です。具体的には、児童・生徒の人権を守るための措置を行わなかった過失が認定される場合に、法的責任を追及できます。
いじめ被害で慰謝料はどのくらい請求できるものですか?
個々の事案によって大きく異なりますが、いじめによってPTSDや適応障害などを発症し、長期的な治療を要する場合は比較的高額な慰謝料が認められることもあります。精神的被害の程度や被害者の年齢、いじめの継続期間、学校の対応状況などが総合的に考慮されます。
いじめ被害で裁判を起こすか迷っています。どのように判断すればよいでしょうか?
裁判には時間や費用がかかり、被害者の負担も大きくなります。まずは弁護士やスクールカウンセラーなどの専門家に相談し、示談や和解の可能性も含めて検討することが大切です。いじめ被害の深刻さや学校側の態度を踏まえ、最適な解決策を探りましょう。
解説
いじめ被害における法的責任の根拠
いじめは、単なる子ども同士のトラブルではなく、民法の不法行為(民法709条)として損害賠償請求の対象になり得ます。加害者が未成年の場合、その保護者に対して監督義務違反を問うことができます。また、学校がいじめを見過ごしていた場合、学校には安全配慮義務違反(民法415条類推適用など)や国家賠償法(公立学校の場合)に基づく責任が問われる可能性があります。
いじめ防止対策推進法の役割
「いじめ防止対策推進法」では、学校や教育委員会がいじめの早期発見や迅速な対応を行うことを義務づけています。具体的には、いじめ防止基本方針の策定や、いじめを受けた児童・生徒の保護措置、加害者への指導などが規定されています。もし学校側がこの法律で定める措置を怠っていたことが明らかになれば、過失を問われる根拠の一つとなります。
被害者がとるべき初動対応
- 証拠の確保
いじめの様子がわかるメッセージや画像、日記、診断書などを集めておきましょう。 - 学校への相談
教師や管理職(校長・教頭)に状況を伝え、いじめ対策委員会などへの報告を求めるのが第一歩です。 - 医療機関の受診
心身に不調をきたしている場合は、精神科や心療内科などを受診し、必要に応じて診断書を作成してもらいましょう。 - 専門家への相談
学校が誠実に対応しない、または状況が深刻な場合は、弁護士やスクールカウンセラー、教育委員会の相談窓口などを活用してください。
弁護士に相談するメリット
- 適切な損害賠償額の算定
慰謝料や治療費など、請求可能な損害項目をもれなく把握して請求できるようサポートします。 - いじめの事実立証を補強
いじめの証拠を整理し、加害者側や学校側の過失を法的に立証するためのアドバイスや書類作成を行います。 - 学校や加害者保護者との交渉
被害者本人や保護者が直接交渉するより、弁護士が間に入ることで冷静かつ専門的に話を進めやすくなり、精神的負担を減らせます。 - 裁判手続きのサポート
裁判に発展した場合にも、訴訟戦略の構築や証人申請、証拠提出など、複雑な手続きを弁護士が一括して代行します。
まとめ
いじめ被害は、被害者とその家族に多大な苦痛とストレスをもたらします。いじめに対しては早期発見・早期対応が重要ですが、すでに深刻化してしまった場合でも法的な手段を活用することで被害回復を目指すことが可能です。学校側の対応が不誠実だったり、加害者側が協力的でなかったりする場合には、弁護士の力を借りることで状況が改善するケースも少なくありません。
弁護士法人長瀬総合法律事務所では、いじめ被害の法的手続きや示談交渉などに対応しています。お子さんの安全・安心を取り戻すためにも、いじめ問題でお悩みの際はぜひ当事務所へご相談ください。
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