介護事故

2025/02/04 介護事故

介護施設における医療ミスと責任所在:施設・医療従事者・家族が知るべき注意点

はじめに

介護施設では、日常的な介護サービスだけでなく、医師や看護師が常駐して医療行為を行う場合があります。また、通院や往診によって医療サービスを受けるケースも少なくありません。こうした環境で医療的な処置が行われる際、万が一ミスが起きてしまうと、高齢者や要介護者にとっては大きなリスクとなります。

医療ミスが疑われる場合、「医師や看護師など医療従事者の責任なのか」「施設としての管理責任なのか」「そもそも医療行為として適切だったのか」など、判断が難しい点が多く存在します。本稿では、介護施設での医療ミスとその責任所在、具体的な対応策を整理します。

Q&A

Q1:介護施設で医療ミスが起きた場合、医師や看護師などの個人が責任を負うのですか?

一般的には、医療行為を行った医師や看護師が「過失責任」を問われることになります。ただし、雇用関係がある場合には、施設(事業者)側が「使用者責任」を負う形で、利用者への賠償責任を負うケースが多いです。

Q2:どんな事例が医療ミスに該当するのでしょうか?

以下のようなケースが代表的です。

  • 誤薬・投薬ミス
    本来投与すべき薬の種類や量を間違える
  • 処置ミス
    褥瘡(床ずれ)の処置や傷の縫合が不適切で感染症を引き起こす
  • 注射・点滴のミス
    注射部位の選択や量を誤り、血管外漏出や合併症を引き起こす
  • 検査・診断ミス
    検査結果の見落とし、緊急性を要する症状を見逃す

Q3:医療ミスを疑った場合、まずはどう対応すべきですか?

まずは医療機関や介護施設に対して経緯の説明を求め、医療記録や看護記録を開示してもらいましょう。また、可能ならばセカンドオピニオンを得て、医学的にどのような過失があったのか専門家の意見を聞くことが重要です。

Q4:医療ミスで後遺症が残った場合、どの程度の損害賠償が認められますか?

事故の内容や後遺障害の程度、被害者の年齢、職業などによって金額は大きく変わります。治療費や入院費、慰謝料だけでなく、要介護度が上がった場合の将来の介護費用なども加算される可能性があります。

Q5:施設側が医療ミスを認めず、協力的でない場合はどうするべきでしょうか?

医療記録や看護記録の開示を拒否する、過失を否定し続けるなどの場合は、弁護士に相談し、法律的手段での解決を検討するのが望ましいです。裁判所の手続きを通じて記録を開示してもらう方法などもあります。

解説

医療ミスと法的責任の根拠

医療ミスは、医療従事者の業務上過失として民事上の不法行為責任(民法709条)や、場合によっては刑事責任(業務上過失致死傷罪)にも発展します。介護施設内であっても、医師や看護師が医療行為を行う際には、通常の医療機関と同等の注意義務が求められます。

  • 注意義務違反(過失)の有無
    医学的水準に照らして、一般的に行われるであろう処置・診断を行わなかったのか
  • 被害との因果関係
    適切な医療行為が行われていれば事故を回避できたかどうか
  • 結果責任の程度
    死亡や後遺症など被害の深刻度に応じて賠償額が増減

介護施設の管理責任

介護施設は、医師や看護師を常駐または派遣・嘱託の形で雇用・契約していることが多いです。その場合、職員の過失によって利用者が被害を受けた場合、施設(事業者)が「使用者責任」を問われる可能性が高いです。また、医師や看護師との連携体制が不十分であったり、必要な医療設備や薬剤管理が杜撰だった場合、施設自体の管理責任を追及されることもあります。

医療ミスにおける立証の難しさ

医療ミスの事案では、専門性の高い医学的知識が要求されるため、ミスの存在や因果関係を立証するのは容易ではありません。施設側が保有する医療記録や看護記録、処方箋などが証拠となるため、これらの書類を正確に開示させることが重要です。また、医療過誤に詳しい医師や専門家の意見書が、裁判や示談交渉を進める上で有効な資料となります。

弁護士に相談するメリット

  1. 専門的知識の活用
    医療ミスや医療過誤事案を取り扱った経験がある弁護士なら、必要な証拠の集め方や専門家の紹介など、スムーズに対応できる可能性があります。
  2. 記録開示の交渉・手続き
    施設や医療機関が積極的に情報を開示しない場合、弁護士が法的根拠を示しながら書類の開示を求めることで、事実解明に近づきます。
  3. 被害者の損害の適切な評価
    後遺症が残った場合や死亡事故の場合など、医療ミスの影響が長期に及ぶケースもあります。将来の介護費用や慰謝料などを総合的に評価し、適切な賠償を請求できます。
  4. 裁判手続きの支援
    示談で解決しない場合には裁判となりますが、弁護士が訴状や証拠書類の作成、証人尋問の準備などを行い、依頼者の主張をサポートします。

まとめ

介護施設内での医療行為は、利用者の健康や生命を直接左右する重要な業務であるがゆえ、医療ミスが起きた場合の影響は非常に大きいです。万が一事故に遭遇したら、まずは施設側と医療従事者から事実関係を詳細に確認し、必要に応じて専門家にセカンドオピニオンを求めましょう。医学的・法的観点から過失の有無や因果関係を立証するには、弁護士のサポートが有益です。

弁護士法人長瀬総合法律事務所では、介護施設における医療ミスや医療過誤に関する事案にチア王し、被害者の方やご家族が納得のいく解決を得られるようサポートしています。お困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。


 

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