介護事故

2025/02/15 介護事故

介護施設での感染症発生と責任問題:集団感染を防ぐための管理義務と賠償リスクとは

      はじめに

      インフルエンザやノロウイルス、新型コロナウイルスなど、感染症が介護施設内で広がると、大きな集団感染へと発展し、高齢者の健康や命が脅かされる事態に至る可能性があります。特に要介護度の高い利用者は免疫力が低下しているケースが多く、重症化リスクも高いことから、衛生管理感染対策は施設運営における重要課題の一つです。

      それでもなお、感染症の流行を完全に阻止するのは難しく、適切な対応が遅れた結果、大勢が罹患し、重症化や死亡事故が起きてしまうケースが存在します。本稿では、介護施設における感染症発生と法的責任をテーマに、施設側の義務、発生時の対応、被害者がとり得る行動、そして弁護士の役割などを解説します。

      Q&A

      Q1:介護施設で集団感染が起きた場合、施設に賠償責任は発生するのでしょうか?

      施設には、入所者が安全かつ健康に生活できるよう衛生管理防疫対策を行う義務があります。たとえば、手洗い・消毒の徹底、定期的な換気、発熱者への早期対応などを怠った結果、感染拡大が防げたはずの範囲を超えて広がったなら、施設側が過失を問われる可能性が高いです。しかし、不可抗力的要素やパンデミック規模の感染力がある場合、施設側の責任を限定する場合もあります。

      Q2:具体的にどのような感染症が問題になりますか?

      インフルエンザやノロウイルス、新型コロナウイルス、RSウイルスなど多岐にわたります。いずれも集団生活で拡散しやすく、高齢者が感染すると肺炎や脱水症状などで重症化しやすい特性があります。

      Q3:施設側はどのような対策を取るべきですか?

      一般的には、

      • 体温チェックや健康観察を定期的に実施し、発熱や体調不良者がいたら早期隔離・受診
      • 消毒・清掃の徹底(共用部分、トイレ、手すりなど)
      • 外部訪問者の制限やオンライン面会の活用
      • 換気・空気清浄やマスク着用を含む基本的感染対策
        などが挙げられます。

      Q4:感染症で入院や死亡した場合、どんな損害を請求できますか?

      治療費や入院費、慰謝料のほか、後遺症が残った場合は将来の介護費や逸失利益なども請求対象になり得ます。死亡事故に至った場合は、遺族が死亡に伴う損害賠償慰謝料を請求する可能性が高いです。

      Q5:施設の対応に納得できない場合はどうすればいいでしょうか?

      まずは事故報告書や感染対策マニュアルの有無、実際の運用状況を確認します。施設側が過失を認めない場合や、損害賠償の話し合いが進まないときは、弁護士に相談して示談交渉や裁判を検討してもよいかと思われます。

      解説

      安全配慮義務と衛生管理

      介護施設では、入所者の体力・免疫力が低下しているため、インフルエンザなどの感染症にかかりやすいリスクを見越したうえで、

      • 定期的な健康チェック(体温測定、体調問診など)
      • スタッフの衛生教育
      • 発症者の隔離と適切な医療連携
      • 緊急時マニュアルの整備
        を行うことが求められます。特に大量罹患が起きれば、施設内だけで完結できない可能性もあるため、保健所や医療機関との連携が不可欠です。

      施設が責任を問われる事例

      1. 感染者の早期発見・隔離を怠った
        体調不良を訴える利用者を放置し、結果的にウイルスを他の利用者に大量感染させたケース。
      2. 基本的な衛生対策の不備
        手洗い・うがい、消毒用アルコールなどを設置せず、共用部分の清掃や換気を十分にしなかった。
      3. クラスター発生後の対応遅れ
        発生を把握しながらも、外部に報告せず、拡散を放置してしまったため被害が拡大。

      事故後のフロー

      1. 医師の診断・検査
        感染症を疑う利用者がいれば検査を受けさせ、陽性なら速やかに隔離など対応。
      2. 施設の報告書確認
        施設が作成する感染経路や対策履歴の記録を精査し、過失や不備を特定。
      3. 示談・裁判
        保険がある場合は保険会社との折衝、施設の過失を認めない場合は裁判へ。

      弁護士に相談するメリット

      1. 過失立証のサポート
        感染経路や施設の管理体制を調査し、法的に施設の過失が認められるかどうかを分析。厚生労働省や地方自治体のガイドラインとの比較なども行う。
      2. 損害項目の算定
        医療費や慰謝料のほか、長期合併症や死亡事故に伴う損害を正確に評価し、請求金額を根拠づけられる。
      3. 施設との交渉代行
        施設側が責任を否定する場合でも、弁護士が法律的根拠に基づいた交渉を進め、公平な合意を得やすくする。
      4. 再発防止策の合意
        示談書や和解書に、今後の感染対策の強化や具体的手順を盛り込むよう提言することで、二度と同じ悲劇が繰り返されないように努める。

      まとめ

      高齢者や要介護者が集まる介護施設では、感染症が拡大してしまうリスクが高く、集団発生すれば利用者の命に関わる重大な事態となり得ます。施設は普段から衛生管理や緊急対応の整備をする義務を負っており、これを怠った結果、被害拡大が防げた可能性があった場合は、施設側が責任を追及されることもあり得ます。

      感染症による被害に直面した家族としては、まず医療対応を最優先し、続いて施設の説明や感染対策実施状況を確認することが重要です。納得のいかない対応が続くときは、弁護士を通じて示談交渉や裁判手続きを検討し、適切な賠償と再発防止策を求めることが望ましいでしょう。弁護士法人長瀬総合法律事務所では、介護施設でのトラブルにも豊富な実績があり、安心してご相談いただけます。


       

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