介護事故

2025/02/26 介護事故

訪問介護中の事故と損害賠償:自宅で受ける介護サービスのリスクと対応策

      はじめに

      高齢者が自宅で生活を続けながら介護サービスを受ける「在宅介護」は、本人の生活習慣や環境を変えずにケアを受けられる利点があります。しかし、訪問介護(ホームヘルプサービス)や訪問看護などが行われる中で、転倒事故や誤薬、あるいは窃盗などのトラブルが起きることも少なくありません。在宅での介護は、施設と違ってスタッフが常駐しているわけではないため、安全管理の難しさや監督責任の境界が曖昧になりやすいという問題もあります。

      本稿では、訪問介護中の事故をテーマに、典型的な事例や責任主体、事故後の賠償請求の流れなどを解説します。さらに、利用者・家族が知っておくべき予防策や、法的トラブルが生じた際の対応、弁護士に相談するメリットを整理し、安心して在宅介護を利用するためのポイントを提供します。

      Q&A

      Q1:訪問介護中の事故は、訪問介護事業所がすべて責任を負うのでしょうか?

      訪問介護を行うヘルパーは、多くの場合事業所に雇用され、利用者との間には直接の雇用関係がありません。そのため、民法の使用者責任(民法715条)に基づき、基本的には事業所が損害賠償責任を負う可能性があります。ただし、事業所が適切な指示を行い、ヘルパーの過失が全く予測不能であった場合などは、争点となる可能性があります。

      Q2:どんな事故が起きやすいですか?

      典型的には、

      • 移乗介助時の転落・転倒
      • 誤薬(薬の種類や時間を間違える)
      • 入浴介助時の溺水や転倒
      • 掃除・洗濯作業中の物損事故や紛失、盗難疑惑
        が挙げられます。

      Q3:利用者本人が認知症などで、介護の際にトラブルを引き起こすケースは?

      たとえば、認知症の方が急に暴力的になってヘルパーに怪我を負わせる場合もあります。逆に、ヘルパーが利用者の財物を盗む事件なども報告されています。いずれの場合も、利用者やヘルパー個人の責任か、事業所の監督不足かを検討しなければなりません。

      Q4:事故が起きた際、まず家族はどうすればいいですか?

      利用者の安全確保・医療機関の受診、事故の経緯についてヘルパー・事業所から詳しい説明を受ける、必要書類(訪問介護計画書、事故報告書など)のコピーを入手する、などが基本的なステップです。納得のいかない場合は、弁護士に相談して責任の所在と損害賠償を検討すると良いでしょう。

      Q5:在宅介護で事故を防ぐにはどうしたらいいでしょうか?

      ケアプランサービス内容を事前にしっかり確認し、利用者の身体状況やリスクをヘルパーと共有することが大切です。家族が可能な範囲で立ち会ったり、日誌やチェックリストを活用して情報交換するなど、コミュニケーションを密にしておくと予防に繋がります。

      解説

      訪問介護の特徴と責任主体

      在宅介護では、利用者宅にヘルパーが定期的に訪問し、身体介護や家事援助などを行います。ヘルパーは事業所の指示のもと、ケアプランに沿ったサービスを提供しますが、以下の点で事故リスクが上昇しやすいです:

      • 家の構造や環境
        段差や狭い廊下など、施設にはない住宅独自の構造的リスク
      • スタッフ単独行動
        他の職員の助けをすぐには得られず、緊急時の対応が遅れがち
      • コミュニケーション不足
        利用者本人や家族との情報共有が不十分で、食事や薬などにミスが起きることも

      事故が起きる具体的シチュエーション

      1. 移乗介助時の落下
        ベッドから車いすへ移る際、一人で抱えようとしてバランスを崩し、利用者が転落し骨折。
      2. 入浴介助中の溺水
        浴槽で利用者を残して短時間離れた結果、呼吸困難を起こして救急搬送。
      3. 誤薬
        朝・昼・夜の区別や薬剤の種類を間違え、利用者の体調を悪化させる。
      4. 窃盗や紛失疑惑
        ヘルパーが来たタイミングで家の貴金属が紛失。本人か他の要因かが問題になる。

      事故後の手続き

      1. 医療機関での診察
        怪我がある場合は速やかに受診し、診断書を取得。体調不良の場合も医師の意見を記録。
      2. ヘルパー・事業所による事故報告書
        何が起こったのか、どのような介助行為が行われていたかを明確に。必要があればケアプランやサービス提供記録も確認。
      3. 示談・裁判
        事業所が賠償を認め示談となるケースと、責任を否定して法的手続きに進むケースがある。

      弁護士に相談するメリット

      1. 利用者・家族側の過失有無も含めた分析
        家の構造や利用者の状況によっては、事故発生の一因が家族の準備不足にあると事業所が主張することも。弁護士が両者の言い分と証拠を精査し、適正な過失割合を判断する。
      2. 損害賠償項目の正確な把握
        治療費や入院費、後遺障害が残れば将来の介護費や慰謝料なども含まれるため、見落としがないよう専門的観点で請求額を計算。
      3. 事業所や保険会社との交渉
        多くの訪問介護事業所は賠償責任保険に加入しているが、保険会社が過失を否定する場合、個人での交渉は困難になりがち。弁護士が法的根拠を示しながら交渉を進めることで、公平な解決を得やすくなる。
      4. 再発防止策の提示
        示談書や合意書に、再発防止策を盛り込み、事業所のケア体制改善を促すことも可能。

      まとめ

      訪問介護中の事故は、利用者とヘルパーが11で向き合う場面が多いため、施設とは異なるリスクを抱えています。人手不足や連携不足から、移乗介助や投薬などでトラブルが発生し、利用者が骨折・体調悪化などの被害を受ける事例が後を絶ちません。万が一、事故が発生した場合には、まず利用者の安全を確保し、医療機関の診断を受けたうえで、事業所の説明事故報告書をしっかり確認しましょう。

      話し合いで解決が難航する場合は、弁護士に相談し、適切な賠償額や責任主体を明確にしながら示談交渉・裁判へ進むことを検討してください。弁護士法人長瀬総合法律事務所では、訪問介護中の事故をはじめ、在宅介護に伴う様々なトラブルに関しても多角的にサポートしています。


       

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