介護事故

2025/03/16 介護事故

介護職員のミスによる事故と法的責任:安心できる介護環境を実現するためのポイント

      はじめに

      介護施設や在宅介護の現場では、高齢者や要介護者に対して日常的な生活支援や身体介助が行われています。しかし、その過程で介護職員がヒューマンエラー(人的ミス)を起こし、利用者に怪我や健康被害をもたらす事故が少なからず発生しています。誤薬や食事介助のミス、身体介助時の転倒など、多岐にわたるトラブルが報告され、その背景には過密な業務や人手不足、教育研修の不足などが存在します。

      本稿では、介護職員のミスによって事故が起きた場合の法的責任の考え方や、利用者・家族側が取るべき手順、弁護士に相談する利点などを整理します。また、施設側の使用者責任や安全配慮義務についても解説し、再発防止のポイントを整理します。

      Q&A

      Q1:介護職員のミスが原因で利用者が怪我をした場合、誰に賠償責任を問うことができますか?

      介護施設を運営する法人(または自治体・社会福祉法人等)に使用者責任が認められるため、利用者はまず施設側に対して損害賠償を請求するのが一般的です。職員個人の過失が大きい場合でも、利用者と職員の間には直接の雇用関係がないため、利用者から見ると事業者(施設運営者)に責任を追及する形となります。

      Q2:具体的にどんなミスが多いのでしょうか?

      代表的な例として、

      • 誤薬(薬剤の種類や量を間違える)
      • 食事介助の失敗(誤嚥・窒息事故につながる)
      • 身体介助中の落下(移乗時に支えを失い転倒)
      • 業務記録の漏れ(利用者の体調変化を見逃し、対応が遅れる)

      Q3:ミスを減らすためには、施設側にどんな取り組みが必要でしょうか?

      スタッフ研修の強化やチェックシステムの導入、二重確認体制などが挙げられます。誤薬の防止ならダブルチェック、移乗介助なら二人以上での対応をルール化するなど、業務プロセスを見直すことが効果的です。また、職員同士が情報共有しやすい仕組みづくりも重要です。

      Q4:事故が起きた際、利用者や家族がすべき第一の対応は?

      怪我の有無や体調の変化を確認し、医療機関で診察・治療を受けることが先決です。同時に、事故がいつ・どこで・どのように起こったのか、施設側の説明や事故報告書を必ず確認し、不審点や不明点があれば質問して記録を残しましょう。

      Q5:話し合いがまとまらない場合、どのタイミングで弁護士に頼るべきでしょうか?

      施設が過失を否定する、もしくは賠償金の提示額が著しく低いなど、示談交渉が行き詰まった時点、または最初からスムーズな交渉を望む場合は弁護士に依頼するとよいでしょう。時間が経つほど記憶があいまいになり、証拠収集が難しくなるため、なるべく早期に相談するのが望ましいです。

      解説

      介護職員のミスと使用者責任

      介護職員のミスによって利用者が被害を受けた場合、民法の使用者責任(民法715条)が適用され、事業者(介護施設運営主体)が利用者に対して損害を賠償する責任を負うと考えられます。

      • 事業者の監督義務:職員の教育や監督を十分に行っていたか
      • 適切な業務マニュアル:誤薬防止や介助手順など、ルールを整備・周知していたか
      • 勤務体制の適正化:一人の職員に過度な業務を集中させていないか

      これらが不十分なままミスが起きた場合、事業者の管理責任が問われやすいです。

      事故後の流れ

      1. 受診と診断書
        怪我や体調不良がある場合は医療機関へ行き、診断書で被害状況を把握。
      2. 事故報告書とケア記録の確認
        施設が作成した報告書や介護日誌を確認し、職員の行動やケア手順との齟齬がなかったかを探る。
      3. 示談交渉・裁判
        施設が非を認め賠償を提案すれば示談で解決する場合もあるが、否定されれば弁護士を通じて法的手段に進む。

      弁護士に相談するメリット

      1. ミスの事実立証・証拠収集
        誤薬や介助失敗の経緯を示す記録や職員の証言、専門家の見解を集めて事故の原因を明確にする。
      2. 損害の全体像を把握
        ケガの治療費や後遺障害だけでなく、介護度アップによる将来の費用、慰謝料などを適正に計算。
      3. 施設・保険会社との交渉代理
        多くの介護施設は賠償責任保険に加入しているため、保険会社が交渉窓口となることが多い。弁護士が法的根拠を示しながら合理的な示談を目指す。
      4. 再発防止への提案
        和解条件に、スタッフ教育や業務マニュアルの整備などの改善策を盛り込み、同じミスを繰り返さないよう促すことができる。

      まとめ

      介護職員のミスによる事故は、要介護者・高齢者にとって深刻な被害をもたらし、生活の質を大きく損なうリスクが伴います。施設や在宅サービスの事業者は職員の教育・研修や業務マニュアルの整備を徹底し、ミスが起きにくい仕組みづくりを進めるべきです。万一事故が発生し、施設側が過失を認めない・賠償を拒否するといった事態に直面した場合、利用者や家族は弁護士に相談して適正な損害賠償を請求する必要があります。

      弁護士法人長瀬総合法律事務所では、介護職員のミスが原因となる事故紛争を担当し、示談交渉や裁判の場で被害者の権利や声を適切に反映させるためのサポートを行っています。大切な家族がミスによる被害を受けた際は、一度専門家の助言を仰ぐことをおすすめします。


       

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