介護事故

2025/03/18 介護事故

介護保険制度と事故トラブル:費用負担から損害賠償まで、意外と知らない注意点

      はじめに

      日本の介護保険制度は、高齢者や要介護者が必要なサービスを受けやすくするための仕組みとして機能しており、在宅や施設での介護サービス費用を一定割合補助する大きな役割を担っています。しかし、実際に事故やトラブルが生じた場合、介護保険がその損害賠償を直接カバーするものではないため、「介護保険で補償してもらえるはず」と誤解しているケースが少なくありません。そこで事故対応においては、保険給付とは別に事業者や保険会社との損害賠償問題が浮上することが多いです。

      本稿では、介護保険制度と事故トラブルにまつわる法的な側面を整理し、利用者側と事業者側それぞれが把握しておくべきポイントや、弁護士への相談メリットについて解説します。

      Q&A

      Q1:介護保険を使っている最中に事故が起きた場合、介護保険が損害を補償してくれるのですか?

      介護保険は、あくまで要介護者が介護サービスを利用する際の費用を一部補助する制度です。事故による損害賠償(治療費や慰謝料など)を直接的に補償する仕組みではありません。事故に関する賠償は、事業者や施設の責任が認められれば、その事業者や保険会社(賠償責任保険など)との交渉で決まるのが一般的です。

      Q2:介護保険サービス中の事故は、事業者(介護施設や訪問介護事業所)がすべて責任を負うのですか?

      事業者が安全配慮義務を怠り事故が起きたなら、不法行為責任や管理責任が問われます。ただし、利用者本人の不可抗力や家族の指示ミスなど、複合的要因がある場合は責任が分担されることもあります。最終的に責任の度合いを判断するためには、各当事者の過失割合が争点となるでしょう。

      Q3:介護保険サービス中に医療ミスが起こった場合、健康保険と介護保険の扱いはどうなりますか?

      医療ミスは主に健康保険の領域で、治療費などは健康保険を適用できます。一方、介護保険は日常的な介護サービス(身体介護や家事支援など)を補助する制度であり、医療ミスによる損害賠償や治療費補償を直接担うわけではありません。事故後の責任追及は「医療過誤」の面で別途検討されます。

      Q4:デイサービスや訪問介護の最中に事故が起きたら、介護保険のサービス計画書はどう関係するのでしょう?

      事故原因を探る際に、サービス計画書(ケアプラン)や個別援助計画で定められた支援内容と実際の対応に乖離がなかったかが注目されます。計画通りに安全配慮がなされていなければ、事業者のミスを主張しやすくなります。

      Q5:介護保険を利用していて、事業者とのトラブルがこじれた場合、どうすればいいですか?

      まず、事業者やケアマネジャーを通じて話し合いを行い、それでも解決しない場合は公的機関に相談する手段もあります。賠償を伴う深刻なトラブルに発展したなら、弁護士に依頼して法的手続きを視野に入れるべきでしょう。

      解説

      介護保険の目的と事故対応のギャップ

      介護保険制度は、高齢者の自立支援と家族の負担軽減を主目的として設計されています。利用者は要介護度に応じて在宅や施設サービスを受けることができますが、事故が起きた場合、その賠償を介護保険がカバーするわけではありません。

      • 保険はあくまでサービス費用の一部補填
      • 事故賠償は民事上の不法行為責任や施設の管理責任によって解決

      こうしたギャップを理解しておくことが、利用者や家族にとって重要です。

      介護保険サービス中の事故例

      1. 訪問介護時の転倒事故
        ヘルパーの見守り不足で利用者が足を滑らせ骨折。
      2. 施設内での誤薬や誤嚥
        看護師の確認ミスで薬の種類を間違える、介護職員が嚥下機能に合わない食事を提供して誤嚥を引き起こす。
      3. 入浴介助中の溺水
        デイサービスの入浴介助で職員が目を離した間に利用者が沈み、呼吸困難を起こす。

      事故後の手続きと注意点

      1. 医療機関での治療
        けがや体調悪化があれば速やかに診察。診断書で被害内容を確定させる。
      2. 事業者の事故報告書確認
        サービス計画やケア手順との矛盾がないか、介護記録を照合する。
      3. 示談交渉・裁判
        賠償責任を事業者が認めれば示談で解決することもある。拒否や否定があれば裁判手続きに進む場合も多い。

      弁護士に相談するメリット

      1. 適切な過失立証
        介護保険のケアプランや事業者のマニュアル、職員配置表などを精査し、事故原因やサービスの不備を根拠付ける。
      2. 損害項目の的確な整理
        治療費だけでなく、介護度上昇に伴う費用、逸失利益、慰謝料なども含めて請求内容を確定。
      3. 施設・保険会社との交渉
        事業者が損害賠償保険に加入している場合、保険会社とやり取りするのが一般的。弁護士が間に立って合理的な和解を目指す。
      4. 裁判対応と再発防止
        示談が決裂したら裁判へ。弁護士が書面や証拠を整え、有利に進められる。また、和解条件に施設のサービス改善を盛り込む提案も可能。

      まとめ

      介護保険制度は要介護者や家族にとって欠かせない支えとなる一方、事故が起きた際の損害補償を直接行うものではないことを理解しておく必要があります。サービスを提供する事業者や施設が安全配慮義務を尽くさず、結果的に大きな被害が発生した場合には、事業者側が民事上の損害賠償責任を問われる可能性が大いにあります。事故後の対応では、まず被害状況を正確に把握し、事業者の説明や事故報告を精査し、納得いかない際は弁護士に相談するのが得策です。

      弁護士法人長瀬総合法律事務所では、介護保険にまつわる事故・トラブルをはじめとした高齢者介護の法的問題について解決をサポートしています。利用者や家族が安心して介護サービスを受けられるよう、迅速かつ丁寧な対応を心がけておりますので、お気軽にご相談ください。


       

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