介護事故

2025/03/19 介護事故

介護現場での医療ミスと責任所在:看護・医療ケアのリスクを正しく理解する

      はじめに

      介護施設では、利用者の健康管理を担う看護師や医師が配置され、医療ケアを行う場面があります。入居者の状態に応じて投薬管理や処置が必要となるケースも少なくありません。しかし、その際に誤薬や注射の失敗、緊急時対応の遅れなどの医療ミスが起こり、被害者に重度の後遺症や死亡事故が発生する場合もあるため、非常に深刻な問題となり得ます。本稿では、介護施設で行われる医療行為に伴うミスを解説し、事故発生時の責任所在や法的請求、弁護士に依頼するメリットなどを整理します。

      Q&A

      Q1:介護施設で医療行為が行われることは一般的なのでしょうか?

      特別養護老人ホームや介護老人保健施設などでは、施設によっては看護師や准看護師が常駐して、点滴や経管栄養管理などの医療的ケアを行うことがあります。さらに往診医が定期的に来訪し、処方や処置をするケースも珍しくありません。

      一方、グループホームなどでは医療行為が最小限にとどまるところもあり、施設の種類や規模によって異なります。

      Q2:介護施設で医療ミスが起きた場合、どのような責任が発生しますか?

      介護施設やその職員が行う医療的ケアに過失があり、利用者が損害を被った場合は、不法行為責任として損害賠償が発生します。職員個人ではなく、まずは施設の運営法人が使用者責任を負うのが一般的です。また、医師が直接指示を誤ったり処置を失敗した場合は、医療過誤としての責任が問われることもあります。

      Q3:医療ミスの例を教えてください。

      代表的には、

      • 誤薬・誤注射(薬剤の種類や量を誤る、注射部位の間違いなど)
      • 感染管理の不備(褥瘡処置やカテーテル交換時の滅菌不足で感染症を引き起こす)
      • 緊急時対応の遅れ(発作や急変が疑われる状況で、医師の診察や救急搬送を先延ばしにした)
      • バイタルサインの見落とし(体温・血圧・脈拍などの異常を把握しながら対応を怠り重症化)

      Q4:利用者家族が事前に「医療ケアに同意書」を出していた場合、施設の責任は免除されますか?

      同意書があるからといって、施設側の安全配慮義務や医療ミスの責任が完全に免除されるわけではありません。事故の原因が明らかに施設・職員の過失である場合は、同意書があっても損害賠償を問われます。

      Q5:医療ミスで深刻な後遺症が残った場合、どのように対応すればいいでしょう?

      まずは適切な医療機関での治療・診断を受け、後遺障害の程度を医師に確認します。施設が過失を否定する場合や、示談が難航する場合は、弁護士を通じて過失立証と賠償請求を行う必要があります。

      解説

      介護施設における医療の位置づけ

      介護施設は病院とは異なり、「生活の場」を中心に支援を行う場所です。しかし、利用者の中には慢性疾患や複数の合併症を抱える方も多く、看護師や医師による医療ケアが欠かせません。そのため、施設側には医療安全に対する取り組みが求められ、

      • 職員の医療的知識・技術の研修
      • 褥瘡や感染症などを防ぐ衛生管理
      • 緊急時の迅速な連絡・対応マニュアル

      などの対策が重要となります。

      事故後の対応

      1. 医療機関での正確な診断
        万が一医療ミスが疑われるなら、別の医療機関でセカンドオピニオンを得ると、過失の有無が判断しやすい場合があります。
      2. 事故報告書・看護記録の確認
        処置の経緯や医師の指示内容、看護師の対応を具体的に把握する。施設が開示を渋る場合は弁護士に依頼して開示請求も検討。
      3. 示談交渉・裁判
        施設が過失を認め賠償を提案すれば示談となることも。否定する場合は医療専門家の意見を得ながら裁判に進む可能性。

      弁護士に相談するメリット

      1. 専門家の助言と客観的証拠の整理
        医療行為の過失を立証するには医療知識が不可欠。弁護士が医療専門家や看護学のエキスパートと連携して事実関係を分析。
      2. 損害項目の計算
        治療費、入院費、後遺障害による逸失利益や慰謝料など、多角的に検討。
      3. 施設・保険会社との交渉
        多くの介護施設が損害賠償保険を利用しており、保険会社が中心となる交渉も弁護士が代理してスムーズに進めやすい。
      4. 再発防止の提言
        事故原因を振り返る過程で、施設の医療管理体制を改善する合意を示談文書に盛り込むことも期待される。

      まとめ

      介護施設での医療ミスは、利用者にとって深刻なダメージを与えかねない重大な事故です。施設には、医師や看護師を適切に配置し、消毒や誤薬防止などの医療安全管理を徹底する義務があり、その義務を怠れば不法行為責任が生じます。事故が疑われる場面では、まず医療機関で診断を受け、次に施設の事故報告書や看護記録を確認し、納得がいかなければ弁護士へ相談して示談交渉・裁判手続きを進めることも検討します。

      弁護士法人長瀬総合法律事務所では、介護施設内で発生する医療ミスやケアの失敗に関する紛争に取り組み、被害者の方が安心して解決を目指せるようサポートを行っています。


       

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