2025/03/20 介護事故
介護施設での暴力行為と法的対応:高齢者・職員間トラブルを未然に防ぐケア体制とは
はじめに
介護施設での生活は、要介護者や高齢者が集団で過ごす環境であるため、対人関係やストレスの蓄積などから暴力行為が発生するリスクが否定できません。認知症に伴う行動・心理症状が背景にあったり、職員の対応がうまくいかず利用者が興奮してしまったりと、原因は多岐にわたります。場合によっては、利用者同士のトラブルだけでなく、職員が利用者に対して暴力を振るうという深刻な事態も報道されています。
本稿では、介護施設内での暴力行為をテーマに、施設に求められる安全配慮義務や事故(暴力行為)の発生後に行うべき対処、損害賠償と法的手続き、さらに再発防止策などについて解説します。また、弁護士に相談する意義を紹介し、トラブルを円満に解決するための指針を提供します。
Q&A
Q1:介護施設での暴力行為は、どのような形態が多いのでしょうか?
代表的には、
- 利用者同士の衝突・殴打
- 認知症による興奮状態で職員に手を出す
- 職員が利用者に対して暴力や虐待行為を行う
などが挙げられます。認知症が原因の突発的な暴力もあれば、ストレスやコミュニケーション不足からくる利用者同士のトラブルなど様々です。
Q2:暴力行為によって怪我をした場合、施設はどのような責任を負うのですか?
施設には安全配慮義務や管理責任があるため、利用者同士の暴力を予測できたにもかかわらず適切な監督や分離対策を行わなかった場合や、明らかな職員の虐待行為があった場合、施設運営主体(法人など)が損害賠償責任を負う可能性があります。
Q3:介護職員が利用者を殴ったり暴言を吐いたりする事件については、どのように対処すればいいでしょうか?
職員個人の刑事責任(傷害や暴行罪)と、施設の使用者責任が問題となります。被害者側としては、施設に対して事実確認や謝罪、賠償を求めるとともに、刑事告訴を検討する場合もあります。施設が誠意ある対応を示さないなら、弁護士に相談して示談交渉や法的手続きに進むことも選択肢になり得ます。
Q4:利用者本人に認知症などの原因で重大な過失が認められない場合、誰が責任を負うのでしょうか?
本人が責任能力を欠く状況であれば、監督義務者(在宅なら家族、施設利用なら施設)が賠償責任を問われる場合があります。施設は利用者の特性を踏まえてケア体制を整える義務があり、これを怠った結果の暴力行為なら施設の過失が問われることも考えられます。
Q5:暴力行為が起きた後、どのようにして再発を防ぐことができるのですか?
リスクアセスメントを強化し、トラブルが起こりそうな利用者間の配置を見直す、職員の見守りを増やすなど具体的な対策が必要です。職員への研修や、認知症ケアの専門家の意見を取り入れることも効果的です。
解説
暴力行為と施設の安全配慮義務
介護施設は要介護者を集団で受け入れ、個々の身体・精神状態に合わせたケアを提供する場です。その中で暴力行為が起きると、身体的・精神的苦痛を被害者に与え、施設に対する信頼も失われてしまいます。施設が負う安全配慮義務には、
- 利用者の性格や病状を踏まえた配置
- 職員による見守りや声かけ
- トラブルが繰り返される場合の速やかな対処
などが含まれます。
事故(暴力行為)後の処理手順
- 被害者のケア
まずは負傷・ストレス状態の確認と、必要なら医療機関での診察・診断書取得。 - 施設の事故報告書・ケア記録確認
どのような場面で、なぜ暴力が発生したのか、事前兆候や対応策の有無を調べる。 - 示談・法的対応
被害者が損害賠償を施設に求める場合、示談交渉や裁判で過失や損害額を争う。
弁護士に相談するメリット
- 過失の整理と証拠収集
施設のケア計画や職員配置表、利用者の認知症段階や行動履歴などを分析し、施設がどの程度予防策を講じ得たかを整理。 - 適切な損害賠償請求
怪我の治療費や慰謝料はもちろん、長期的な心理的ケア費用なども含めて請求額を適切に算定する。 - 交渉の代理
施設側が過失を否定・回避しようとする場合、弁護士が根拠を示して説得しやすい。裁判へ移行する場合もスムーズに進行。 - 再発防止策の提言
事故原因を深掘りし、二度と同じ事態が起きないようにするための改善策を示談書などに盛り込む。
まとめ
介護施設内での暴力行為は、身体的被害だけでなく被害者の心に大きな傷を残す深刻な問題です。施設としては利用者の特性や状態を把握し、職員が密にコミュニケーションを取ることで、トラブルを未然に防ぐ対策が求められます。それでも暴力が発生し、施設の安全配慮義務が不十分だったと認められれば、運営主体が損害賠償責任を負う可能性もあります。
万が一、被害者や家族が施設の対応に納得できない場合は、弁護士に相談して事故原因や責任を検証することも選択肢としてご検討ください。弁護士法人長瀬総合法律事務所は、介護施設での暴力行為を含む介護事故問題の解決に実績を有します。
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