2025/03/26 介護事故
訪問介護中の事故と責任:自宅でのケアが招くリスクと賠償問題を知る
はじめに
在宅で介護を受ける高齢者や要介護者にとって、訪問介護は生活を支える大切なサービスです。ヘルパーが定期的に自宅を訪問し、食事・排泄の介助や掃除・洗濯などの日常支援を行うことで、本人や家族の負担が軽減されます。しかしその一方、自宅という施設外の環境で行われるため、訪問介護の最中に事故が起きやすい面もあり、転倒や誤薬、紛失・盗難などのトラブルが報告されています。
本稿では、訪問介護中の事故に焦点を当て、法的責任の所在や損害賠償の仕組み、事故防止に向けた工夫などを解説します。また、万が一事故が発生した場合、利用者や家族がとるべき対応、弁護士に相談するメリットについてもご紹介します。
Q&A
Q1:訪問介護中の事故は、どのようなケースが多いですか?
代表的には、
- 移乗介助時の転倒・落下
- 誤薬や食事ミス(異なる時間帯の薬を渡す、誤嚥させる)
- 清掃中の家財破損や紛失、盗難の疑い
- 入浴介助中の溺水
などが挙げられます。
Q2:事故が発生したら、訪問介護事業所が責任を負うのですか?
訪問介護を提供する事業所が使用者責任を負うのが一般的です。ヘルパーが業務上のミスを起こした場合は、まず事業所が利用者に対して賠償責任を負い、事業所がヘルパーに求償するかどうかは内部問題となります。
Q3:利用者や家族が事故を防ぐためには、何を心がければよいでしょうか?
ケアプランやサービス内容を家族が正確に把握し、利用者の体調変化や希望をヘルパー・事業者と共有することが重要です。また、利用者宅の危険箇所(段差、狭い通路など)を事前に把握し、補助具を準備しておくのも有効です。
Q4:もし事故が起きてしまい、事業所の説明に納得できない場合はどうすればいいですか?
まず医療機関での受診など被害状況を明確にしつつ、事業所が作成する事故報告書などを確認します。示談交渉が難航したり、事業所が過失を否定する場合は、弁護士に相談して示談交渉や裁判手続きを検討するのがよいでしょう。
Q5:事業所やヘルパーが損害賠償保険に入っていれば、問題解決は簡単になるのでしょうか?
保険に加入していれば、保険会社が賠償金を支払う形となるケースが多いです。ただし、保険金の範囲や上限があり、過失の有無を巡って保険会社が支払いを渋ることもあります。やり取りが長引くときは専門家のサポートが必要です。
解説
訪問介護の業務と事故リスク
訪問介護では、利用者の自宅という施設外の環境で身体介護(移乗・排泄・入浴など)や生活援助(掃除・洗濯・買い物など)が行われます。これに伴い、
- 家の段差や床材の滑りやすさ
- 利用者の認知症や身体機能
- ヘルパーと利用者のコミュニケーション
- 家財の管理
などに起因する事故が発生しやすいと言えます。
事故後の手順
- 医療機関での診断
けがや体調不良がある場合は、医師の診断書を取得し、状態を記録しておく。 - 事故報告書の確認
事業所が作成した報告書やケア記録から、事故の経緯や責任主体を探る。 - 示談・裁判
事業所が非を認め賠償金を提示すれば示談で解決することもあるが、否定されれば裁判を視野に入れることになる。
弁護士に相談するメリット
- 事業所の過失立証と損害項目の整理
ケアプランや職員配置、ヘルパーの業務手順と実際の対応とのズレなどを分析し、法的に有効な主張を展開。損害額(治療費・慰謝料・介護費など)を正確に算定。 - 示談交渉の代理
事業所や保険会社との交渉で、依頼者の立場を法的に守りながら合意形成を図る。 - 裁判対応
合意が得られない場合、弁護士が訴訟戦略を立て、書面作成や証人尋問などを進めて依頼者をサポート。 - 再発防止策
和解・示談書にサービス体制改善を盛り込むことで、同様の事故を防ぐきっかけにも。
まとめ
訪問介護中の事故は、在宅という特別な環境で行われる介護サービスの性質上、施設と利用者が直接対峙しにくい事情もあり、万が一トラブルが起きると責任の所在があいまいになるケースが少なくありません。事業所には使用者責任があり、ヘルパーの業務ミスや監督不行き届きによる利用者の怪我や損失は、事業所(法人)が補償責任を負うのが原則です。
事故が起きた際には、まず医療機関での治療を優先し、並行して事故報告書などの証拠を確保・確認しましょう。事業所が賠償を拒むなどで紛争化する場合は、弁護士に相談し、法的根拠に基づいた示談交渉や裁判へ移行することで、公正な賠償金と再発防止策を得やすくなります。弁護士法人長瀬総合法律事務所では、訪問介護中の事故に関して経験豊富な弁護士が、利用者や家族の味方となり問題解決をサポートしています。
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