2025/04/08 学校事故
学校行事中の事故と損害賠償:安全配慮義務を踏まえた対策と被害者の対応策
はじめに
修学旅行や運動会、文化祭などの学校行事は、生徒にとって貴重な学びと経験の場です。しかし、普段の教室や校庭とは異なる場所や活動内容となることが多いため、事故や怪我のリスクが上昇しがちです。たとえば、慣れない土地での移動中に交通事故に巻き込まれたり、学校行事の準備作業で足場が崩れて怪我をしたり、体育祭の高難度パフォーマンスで転落事故が起きたりと、さまざまな事例が報告されています。
本稿では、学校行事中に起きる事故をテーマに、事故原因や法的責任の考え方、被害者・保護者がどのように対応すべきかを整理します。さらに、学校側が注意すべきポイントや、弁護士に相談するメリットについても解説します。
Q&A
Q1:学校行事での事故は、学校が必ず責任を負うのですか?
学校は行事を含めた全体の教育活動において「安全配慮義務」を負っています。もし事故原因が学校の監督・指導不足や設備不備など「防げたはずのリスク」によるものなら、学校(設置者)が過失として不法行為責任を問われる可能性が高いです。ただし、不可抗力や生徒本人の重大な過失が強い場合は、学校の責任が軽減される場合もあります。
Q2:修学旅行先の宿泊施設や観光地での事故は、学校だけでなく施設側も責任を負いますか?
事故の原因が宿泊施設や観光地の管理不備にある場合、施設管理者も損害賠償責任を負う可能性があります。ただし、学校が行程を決める際に下見や安全評価を行わずに危険な場所を選んだなど、学校側の過失が加わる場合もあり、複数の責任主体が関与することがあります。
Q3:どんな事故が多いですか?
例として、
- 遠足や修学旅行での移動中の交通事故
- 体育祭の組体操や激しい競技による転落・衝突事故
- 文化祭のステージ設営時における足場崩れ
- 課外活動や校外学習での自然災害(川や海での事故など)
Q4:事故で損害賠償を求める際、どのような項目が含まれるのでしょうか?
治療費・入院費・通院交通費・慰謝料などが代表的です。後遺症が残った場合には逸失利益や将来の介護費用、家族が看護で仕事を休んだ場合の休業損害なども考慮されます。
Q5:事故後、学校が過失を認めず話し合いが進まないときはどうすればいいですか?
学校や教育委員会が事故原因を否定したり、適正な賠償を提示しない場合は、弁護士に相談して示談交渉や裁判手続きを検討するのが有効です。事実関係や監督体制を法的に立証し、公正な結論を得ることが期待できます。
解説
安全配慮義務と行事の企画・運営
学校行事は通常の授業や校内活動とは異なる環境や要素が多く含まれます。そのため学校には、
- 事前のリスクアセスメント(行事場所や活動内容の危険度確認)
- 適切な引率・監督体制(生徒数に応じた教員配置)
- 緊急連絡体制や救護対策(顧問や保健室、医療機関との連携)
などを用意する責任があります。これらを怠ったまま行事を実施した結果、生徒が事故で負傷したなら、学校側の過失が認められやすいです。
事故後の流れ
- 医療機関での受診
けがや体調不良があれば治療を優先し、診断書を取得する。 - 事故報告書や行事計画書の確認
学校がどのように安全対策を行い、顧問がどのように監督していたかをチェックする。 - 示談交渉・裁判
学校が非を認め賠償を提示する場合と、認めない場合がある。平行線になるなら裁判手続きへ進む。
弁護士に相談するメリット
- 事実関係と過失の立証
行事計画の資料や目撃証言、設備点検記録などを分析し、学校が防げたリスクを放置したと示す証拠を整える。 - 適切な損害項目の算定
治療費、通院費、慰謝料だけでなく、後遺症が残った場合の逸失利益や必要な介護費用などを網羅的に計算。 - 自治体・保険会社との交渉代理
公立校は自治体、私立校は学校法人・保険会社が交渉相手となることが多く、弁護士を介してスムーズに協議できる。 - 再発防止策
和解や示談書に、行事の安全管理強化や教員配置の見直しを含めることで、事故再発を防ぐ意義もある。
まとめ
学校行事中の事故は、子どもにとって楽しく有意義なイベントが一転して大きな不安と悲しみをもたらす深刻な事態です。学校には安全配慮義務があり、リスク管理を十分に行いながら行事を企画・運営する責任があります。万が一事故が起きた場合、まずは医療対応を優先し、その後、行事の準備や当日の監督体制の不備がなかったかを確認してください。学校や教育委員会の対応に納得できない場合、弁護士に相談して示談交渉や裁判で公正な賠償と再発防止策を得ることが重要です。
弁護士法人長瀬総合法律事務所では、学校における事故紛争に知見があり、被害者側の立場を把握しながら、安心できる解決をサポートします。
【弁護士法人長瀬総合法律事務所のYouTubeチャンネル 】
企業法務に関する問題を解説したYoutubeチャンネルを運営しています。
ぜひご視聴・ご登録ください。
【メールマガジンのご案内】
無料WEBセミナー開催のお知らせや、事務所からのお知らせをメールで配信しています。
ぜひこちらのご登録もご検討ください。