2025/04/16 介護事故
介護施設での転倒事故と賠償請求:予防策と適切な対応を解説
はじめに
介護施設や在宅介護の現場において、転倒事故は最も多いトラブルの一つです。高齢者や要介護者はバランス能力や筋力が低下していることが多く、わずかな段差や体位変換の失敗などで骨折や頭部外傷につながるリスクが高いといえます。転倒後の入院や手術で生活能力がさらに低下し、要介護度が進むケースも少なくありません。
本稿では、介護施設で起きた転倒事故に焦点を当て、事故の原因や責任、事故発生後の対応、そして家族が求めるべき損害賠償の仕組みを解説します。また、転倒事故の防止策や弁護士に相談する利点も取り上げ、円滑な問題解決を目指すためのポイントを示します。
Q&A
Q1:介護施設で転倒事故が起こった場合、まず誰の責任が問われますか?
介護施設は利用者の安全を守る管理責任(安全配慮義務)を負っており、転倒事故防止のための施設環境整備や人員配置、巡回などが不十分だったと認められれば、施設運営者(法人など)が損害賠償責任を負う可能性があります。
Q2:転倒事故で発生する損害項目には何がありますか?
骨折等の治療費や入院費、通院費が代表的ですが、後遺症が残った場合には介護度の上昇に伴う介護費用、被介護者の精神的苦痛に対する慰謝料などが請求対象となり得ます。また、家族が看護や付き添いで仕事を休む場合には休業損害を検討することもあります。
Q3:利用者本人に認知症や突発的行動がある場合でも、施設の責任は問えるのでしょうか?
はい。認知症によって予測不能な行動をとりがちな利用者を預かる以上、施設はそれを想定した安全管理体制を整える必要があります。必要な介護度評価や個別ケアプランを作成し、転倒しやすい利用者には床の段差改善や介助の徹底などを実施する義務があります。これらを怠れば、施設の過失が認められる可能性があります。
Q4:事故後、施設と話し合いが行き詰まったときはどうすればいいですか?
弁護士に相談し、事故原因の立証や損害賠償額の算定を行ったうえで示談交渉または法的手続きを検討するとよいでしょう。施設側が加入している賠償保険会社が交渉窓口になることもあるため、専門的知識が必要です。
Q5:転倒事故を防ぐには、具体的にどのような取り組みが効果的でしょうか?
一般的には、
- 段差の解消や手すりの設置
- 床材の滑り止め加工
- ベッドや車いすの転落防止策
- 夜間の十分な巡回体制
- 利用者一人ひとりのリスク評価
などが挙げられます。転倒リスクの高い方には特に重点的な見守りを行うなど、個別ケアが欠かせません。
解説
転倒事故の主な原因
介護施設や在宅介護で転倒事故が起きる背後には、
- 施設設備の欠陥(段差や床の滑りやすさ、照明不足)
- 職員の見守り不足(夜間帯や巡回タイミングなど)
- 個人の身体状況・認知症状(平衡感覚の低下や突発的行動)
- ベッドや車いすの操作ミス
などが複雑に絡み合います。事前のリスク評価と個別ケアプランが十分に機能していれば防げる事故も多いのが実情です。
事故後の手順
- 医療対応
骨折などの疑いがある場合、速やかに受診・診断書を取得。 - 事故報告書の確認
施設側が作成する報告書やケア記録、転倒リスク評価シートなどを精査し、当時の状況を把握。 - 示談・裁判
施設が過失を認め補償を提示すれば示談で解決するケースもあるが、否認されれば弁護士のサポートを得て法的手段に。
弁護士に相談するメリット
- 施設過失の法的立証
ケアプランや点検記録、スタッフの配置表などを根拠に、どの程度施設側が事故を予防できたかを示す。 - 適切な損害項目の算定
治療費だけでなく、介護度アップによる費用、慰謝料、家族の休業損害など、漏れなく請求に含める。 - 示談交渉の代理
施設の管理法人や保険会社との話し合いを弁護士が円滑に進め、公平な賠償額を導く。 - 再発防止策
合意書に施設の設備改善や職員研修を盛り込むことで、利用者全体の安全を向上させることが期待できる。
まとめ
介護施設での転倒事故は、高齢者や要介護者の健康状態や生活の質を大きく損なう重大なトラブルです。施設には利用者のリスクに応じた安全配慮義務があり、事前に適切なケアや環境整備を行っていれば防げるケースが多いとされています。万が一事故が発生し、施設側の説明や対応が十分でない場合は、まず医療機関での治療を優先しつつ、施設の事故報告書やケア記録をよく確認することが重要です。
納得のいかない対応を受けた際や賠償金に大きな隔たりを感じる場合は、弁護士へ相談し、適正な損害賠償や再発防止策を追求することもご検討ください。弁護士法人長瀬総合法律事務所では、介護事故の紛争解決における経験を活かし、被害者側の立場をサポートいたします。
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