コラム

2025/07/08 コラム

交通事故の慰謝料相場はいくら?弁護士基準で計算する方法

交通事故の被害に遭われた皆様に、心よりお見舞い申し上げます。

突然の事故により、お身体の怪我はもちろん、精神的にも大きな苦痛を受けられたことと思います。その精神的苦痛に対して支払われるのが「慰謝料」です。

しかし、加害者側の保険会社から提示される慰謝料の額は、必ずしも適正とは限りません。むしろ、本来受け取れるはずの金額よりも大幅に低く提示されているケースがほとんどです。

この記事では、交通事故の慰謝料に関する正しい知識を身につけていただくため、慰謝料の基本的な種類から、最も高額となる「弁護士基準(裁判所基準)」による慰謝料の相場と計算方法まで、専門家がわかりやすく解説します。

交通事故の慰謝料とは?3つの種類を解説

まず、交通事故における損害賠償は、大きく以下の3つに分類されます。

  1. 積極損害
    治療費、通院交通費、葬儀費用など、事故によって実際に支出を余儀なくされた費用
  2. 消極損害
    事故がなければ得られたはずの利益(休業損害、逸失利益など)
  3. 慰謝料
    事故による精神的苦痛に対する賠償金

このうち、精神的な苦痛を金銭に換算する「慰謝料」は、損害の性質に応じてさらに以下の3つに分けられます。

  • 入通院慰謝料
    事故による怪我の治療のため、入院や通院を余儀なくされたことに対する慰謝料
  • 後遺障害慰謝料
    治療を続けても完治せず、「後遺障害」が残ってしまった場合の精神的苦痛に対する慰謝料(入通院慰謝料とは別に請求できます)
  • 死亡慰謝料
    被害者ご本人が亡くなられたことによる精神的苦痛と、ご遺族の精神的苦痛に対する慰謝料

これらの慰謝料を算定する際には、実は3つの異なる基準が存在し、どの基準を用いるかによって金額が大きく変わるという点が非常に重要です。 

要注意!慰謝料の計算には3つの基準がある

交通事故の慰謝料を計算する際には、「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準」という3つの基準が用いられます。それぞれの特徴を理解しておきましょう。

基準の種類

概要

金額の水準

自賠責基準

自動車の所有者全員が加入を義務付けられている「自賠責保険」で用いられる基準。被害者への最低限の補償を目的としています。

最も低い

任意保険基準

加害者側の任意保険会社が独自に設定している基準。内容は非公開ですが、自賠責基準よりはやや高いものの、弁護士基準には遠く及びません。

中間

弁護士基準(裁判所基準)

過去の裁判例の蓄積から形成された基準で、裁判になった場合に認められる可能性が最も高い金額です。弁護士が介入して交渉することで、この基準での請求が可能となります。

最も高い

保険会社が最初に提示してくる金額は、「自賠責基準」または「任意保険基準」で計算されているため、本来あるべき適正な金額よりも低額です。弁護士に依頼することで、最も高額な「弁護士基準」での交渉が可能になり、慰謝料が2倍以上に増額されるケースも少なくありません。

【種類別】弁護士基準による慰謝料の相場と計算方法

それでは、最も適正な金額である弁護士基準(裁判所基準)で計算した場合、慰謝料の相場はいくらになるのでしょうか。種類別に見ていきましょう。

1)入通院慰謝料の相場

入通院慰謝料は、原則として実際に入院・通院した期間を基に、「損害賠償額算定基準(通称:赤い本)」に記載されている算定表を用いて計算します。

算定表には、骨折などの重傷の場合に用いる「別表Ⅰ」と、むちうちや打撲など比較的軽傷の場合に用いる「別表Ⅱ」の2種類があります。

入通院慰謝料の算定表(別表Ⅰ・重傷用)

(計算例)

  • 骨折で通院を6ヶ月した場合
    別表Ⅰを参照し、116万円が相場となります。
  • むちうちで通院を3ヶ月した場合
    別表Ⅱを参照し、53万円が相場となります。(※自賠責基準では約38.7万円)
  • 重傷で入院1ヶ月、その後通院を6ヶ月した場合
    別表Ⅰの「入院1ヶ月」の列と「通院6ヶ月」の行が交差する、149万円が相場です。

2)後遺障害慰謝料の相場

後遺障害慰謝料は、後遺症の症状や程度に応じて認定される「後遺障害等級(1級~14級)」によって、金額の目安が定められています。等級認定を受けるためには、医師に後遺障害診断書を作成してもらい、自賠責調査事務所による審査を受ける必要があります。

後遺障害等級別の慰謝料相場(弁護士基準)

等級

慰謝料額の目安

主な後遺障害の例

1

2,800万円

常に介護を要する、両眼の失明など

2

2,370万円

随時介護を要する、両足の用を全廃など

3

1,990万円

一眼が失明し他眼の視力が0.02以下など

4

1,670万円

両耳の聴力を全廃、10歯以上の歯科補綴など

5

1,400万円

一手の用を全廃、両足の足指を全部喪失など

6

1,180万円

一眼の失明、脊柱の著しい変形・運動障害など

7

1,000万円

一手のおや指を含む3の手指を失ったものなど

8

830万円

1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したものなど

9

690万円

生殖器に著しい障害を残すものなど

10

550万円

一手のおや指又はおや指以外の2の手指の用を廃したもの

11

420万円

胸腹部臓器の機能に障害を残すものなど

12

290万円

鎖骨、胸骨、肋骨、肩甲骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの

13

180万円

1下肢を1センチメートル以上短縮したものなど

14

110万円

局部に神経症状を残すもの(むちうち等)

※上記は被害者本人分です。被扶養者がいる場合などは増額されることがあります。

3)死亡慰謝料の相場

交通事故で被害者が亡くなられた場合の死亡慰謝料は、被害者の家庭内での立場によって相場が異なります。この金額には、亡くなられたご本人の無念に対する慰謝料と、近親者固有の慰謝料が含まれるのが一般的です。

死亡慰謝料の相場(弁護士基準)

被害者の立場

慰謝料額の目安

一家の支柱

2,800万円

母親、配偶者

2,500万円

その他(独身の男女、子ども、高齢者など)

2,000万円~2,500万円

 

慰謝料が相場より増額されるケースも

上記で解説した相場はあくまで目安であり、個別の事情によっては、これを上回る慰謝料が認められる場合があります。

【増額事由の例】

  • 加害者に、ひき逃げ、飲酒運転、無免許運転、著しいスピード違反、赤信号無視などの悪質な運転態様があった場合
  • 事故後、加害者が被害者に対して謝罪をしない、暴言を吐くなど、著しく不誠実な態度をとった場合
  • 事故が原因で被害者が離婚や失職に追い込まれるなど、生活に重大な影響が出た場合

このような事情がある場合は、弁護士がその事実を具体的に主張・立証することで、慰謝料の増額が期待できます。

まとめ|適正な慰謝料を受け取るために、まずは弁護士にご相談ください

交通事故の慰謝料には「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準」の3つがあり、弁護士に依頼しなければ、最も低額な基準で計算された慰謝料しか受け取れない可能性が非常に高いです。

保険会社から提示された示談金額を見て、「こんなものか」と安易にサインをしてはいけません。その金額は、あなたの受けた精神的苦痛に見合った、適正な金額ではないかもしれません。

弁護士法人長瀬総合法律事務所では、交通事故の被害に遭われた方々の正当な権利を守るため、初回のご相談を無料で承っております。保険会社との交渉や後遺障害等級の申請サポートなど、あらゆる面でお力になります。提示された慰謝料額に少しでも疑問を感じたら、示談を成立させる前に、ぜひ一度私たちにご相談ください。


 

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