コラム

2025/07/10 コラム

後遺障害等級とは?等級認定を受けるための流れと重要なポイント

交通事故の治療を懸命に続けたにもかかわらず、残念ながら痛みや可動域の制限といった症状が残ってしまうことがあります。このような場合、適正な賠償を受けるために極めて重要になるのが「後遺障害等級」の認定です。

この等級が認定されるかどうか、そして、どの等級に認定されるかによって、最終的に受け取れる賠償金額が数百万円、時には数千万円以上も変わってきます。

この記事では、交通事故の損害賠償請求における最大の山場ともいえる「後遺障害等級」について、その意味や認定手続きの流れ、そして適正な等級を獲得するための重要なポイントを解説します。

「後遺障害」と「後遺症」の違い

まず、「後遺症」と「後遺障害」は似ていますが、法的な意味は異なります。

  • 後遺症
    交通事故による怪我の治療後、将来にわたって回復が困難と見込まれる症状全般を指す言葉です。
  • 後遺障害
    後遺症のうち、交通事故との因果関係が医学的に証明され、労働能力の喪失を伴うもので、自賠責保険の等級に認定されたものを指します。

つまり、単に症状が残っているだけ(後遺症)では不十分で、専門機関による審査を経て「後遺障害」として正式に認定されて初めて、後遺障害部分に対する賠償を請求できるのです。

後遺障害等級認定を受ける2つの大きなメリット

なぜ後遺障害等級の認定がそれほど重要なのでしょうか。それは、等級が認定されると、入通院慰謝料とは別に、以下の2つの損害賠償を新たに請求できるようになるからです。

  1. 後遺障害慰謝料
    後遺障害が残ったことによる精神的苦痛に対する慰謝料です。金額は認定された等級(最も重い1級から最も軽い14級まで)に応じて定められており、弁護士基準では110万円~2,800万円にもなります。
  2. 逸失利益
    後遺障害がなければ将来得られたはずの収入のことです。後遺障害による労働能力の低下が、将来の収入にどれだけ影響するかを算定し、賠償を求めます。

この2つが加わることで、損害賠償の総額は飛躍的に増加します。

後遺障害等級認定を受けるための流れ

後遺障害等級認定は、一般的に以下の流れで進みます。

STEP 1:症状固定

医師から「これ以上治療を続けても、症状の大幅な改善は見込めない」と判断された状態を「症状固定」といいます。後遺障害等級の申請は、この症状固定の診断を受けた後から始まります。

注意点

加害者側の保険会社から、治療費の打ち切りを背景に早期の症状固定を打診されることがありますが、まだ症状が改善している段階であれば、医師と相談の上、安易に応じるべきではありません。

STEP 2:後遺障害診断書の作成

症状固定の診断を受けたら、担当医に「自動車損害賠償責任保険後遺障害診断書」という専門の診断書を作成してもらいます。この書類は、後遺障害の審査において最も重要な証拠となります。自覚症状や、レントゲン・MRIなどの検査結果(他覚的所見)を、いかに具体的に記載してもらうかが鍵となります。

STEP 3:認定機関への申請

後遺障害診断書などの必要書類を、損害保険料率算出機構が設置した「自賠責損害調査事務所」という第三者機関に提出します。申請方法には以下の2種類があります。

  • 事前認定
    加害者側の任意保険会社に手続きのすべてを任せる方法です。被害者にとっては手間がかからないというメリットがありますが、保険会社は被害者のために積極的に有利な証拠を集めてくれるわけではないため、適正な等級が認定されないリスクがあります。
  • 被害者請求
    被害者自身が必要書類を収集し、加害者の自賠責保険会社に対して直接、後遺障害の申請と損害賠償の請求を行う方法です。手間はかかりますが、自分に有利な医学的証拠(医師の意見書など)を添付して申請できるため、手続きの透明性が高く、適正な等級認定の可能性が高まります。

STEP 4:認定結果の通知と異議申立て

調査事務所での審査を経て、後遺障害等級が認定(または非該当)されると、その結果が通知されます。この結果に不服がある場合は、「異議申立て」という不服申立手続きを行うことができます。

適正な等級認定を獲得するための5つの重要ポイント

  1. 事故直後から症状固定まで継続して通院する
    症状が一貫して続いていることを証明するため、医師の指示に従い、適切な頻度で通院を続けることが重要です。
  2. 医師に自覚症状を正確に、具体的に伝える
    「これくらい大丈夫だろう」と思わず、痛み、しびれ、めまい、可動域の制限など、どんな些細なことでも具体的に医師に伝えましょう。カルテの記載が重要な証拠となります。
  3. 必要な精密検査をきちんと受ける
    MRICT、神経学的検査など、症状を客観的に証明するための検査は必ず受けてください。特にむちうち(149号、1213号)などのケースでは、画像所見の有無が認定を大きく左右します。
  4. 提出前に「後遺障害診断書」を弁護士に確認してもらう
    医師は治療の専門家ですが、後遺障害認定の専門家ではありません。認定のポイントを押さえた記載がされているか、提出前に交通事故に詳しい弁護士が内容を確認することが極めて重要です。
  5. 「被害者請求」を弁護士に依頼する
    適正な等級認定の可能性を少しでも高めるためには、手間を惜しまず「被害者請求」を選択すべきです。この複雑な手続きを、後遺障害認定に精通した弁護士に任せることが、最善の結果を得るための最も確実な方法といえます。

まとめ

後遺障害等級認定は、手続きが非常に専門的かつ複雑であり、その結果が賠償額を大きく左右します。保険会社任せの「事前認定」で不本意な結果となり、後悔される被害者の方も少なくありません。

適切な後遺障害等級を獲得するためには、医学的知識と法律知識の両方が不可欠です。症状固定の診断を受けたら、あるいはその前からでも、できるだけ早く弁護士に相談することをお勧めします。弁護士法人長瀬総合法律事務所では、後遺障害等級認定のサポートを行っておりますので、お気軽にご相談ください。


 

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