2025/07/28 コラム
自転車事故の損害賠償|加害者になった場合・被害者になった場合の注意点
はじめに
通勤・通学や買い物など、日常の足として便利な自転車。しかし、その手軽さとは裏腹に、ひとたび事故を起こせば、自動車事故と同様に、人生を左右するほどの深刻な事態に発展する危険性をはらんでいます。
近年、自転車利用者の増加に伴い、自転車が関わる交通事故も後を絶ちません。場合によっては、加害者が1億円近い損害賠償を命じられるケースも発生しています。
この記事では、自転車事故の「被害者」になった場合と、意図せず「加害者」になってしまった場合、それぞれの立場で知っておくべき損害賠償の注意点を解説します。
自転車事故の特徴と自動車事故との違い
まず、自転車事故には自動車事故とは異なる、以下のような特徴があります。
- 重傷化しやすい
運転者がヘルメット等で十分に保護されておらず、体が直接衝撃を受けるため、転倒しただけでも骨折や頭部外傷などの重大な結果につながりやすいです。 - 自賠責保険がない
自動車に義務付けられている自賠責保険のような、被害者を最低限救済するための強制保険制度がありません。そのため、加害者が任意の保険に加入していない場合、賠償金の支払いが滞るリスクが高まります。 - 証拠が残りにくい
ドライブレコーダーが搭載されていることが稀なため、事故の状況を客観的に証明する証拠が乏しく、「言った言わない」の水掛け論になりやすい傾向があります。
【被害者になった場合】の注意点と損害賠償請求
もしあなたが自転車事故の被害に遭ってしまったら、自動車事故と同様に、以下の対応を迅速に行ってください。
- 警察に届け出る(110番)
軽微な事故でも必ず警察を呼び、事故の記録を残してもらいます。 - 加害者の情報を確認する
氏名、住所、連絡先を聞き、身分証明書を見せてもらいましょう。 - すぐに病院で診察を受ける
痛みがなくても必ず受診し、診断書をもらってください。
その上で、損害賠償請求を進めます。請求できる項目(治療費、慰謝料、休業損害など)や、慰謝料の算定基準(弁護士基準)は、自動車事故の場合と基本的には同じです。
【被害者側の重要ポイント】
- 加害者が保険に加入しているか確認する
加害者が「個人賠償責任保険」に加入しているかどうかが重要です。これは、自動車保険や火災保険、傷害保険などの特約として付帯されていることが多い保険で、日常生活での事故による損害賠償を補償してくれます。もし加入していれば、その保険会社から賠償金が支払われます。 - 加害者が無保険だった場合の対処
もし加害者が無保険の場合、賠償金は加害者本人から直接支払ってもらうことになります。しかし、支払い能力がない場合、たとえ裁判で勝訴しても、実際にお金を回収するのは非常に困難になるという厳しい現実があります。 - 自分が使える保険を確認する
加害者からの回収が期待できない場合でも、ご自身やご家族が加入している「人身傷害保険」や「傷害保険」が、自転車事故の治療費等をカバーしてくれる場合があります。諦めずにご自身の保険契約を確認してみましょう。
【加害者になった場合】の注意点と対応
逆に、もしあなたが加害者になってしまった場合も、決して軽く考えてはいけません。
- 被害者の救護と警察への届出
これは運転者の義務です。この初期対応を怠ると、後の刑事処分や示談交渉で著しく不利になります。 - 高額賠償のリスクを認識する
自転車事故でも、相手を死亡させたり、重い後遺障害を負わせたりした場合、数千万円から1億円近い賠償を命じられた事例があります。 - 刑事責任を問われる可能性
相手に怪我を負わせた場合、「重過失致死傷罪」といった刑事罰の対象となる可能性があります。
【加害者側の重要ポイント】
- 加入している保険をすぐに確認・連絡する
「個人賠償責任保険」や、自治体によっては加入が義務化されている「自転車保険」に加入していれば、保険会社が示談交渉を代行し、賠償金も保険から支払われます。事故を起こしたら、すぐに保険会社に連絡してください。 - 保険未加入の場合、弁護士に相談する
無保険の場合は、被害者との示談交渉を全て自分で行わなければなりません。相手の請求額が妥当なのか、どのように交渉を進めればいいのか分からず、感情的な対立も深まりがちです。このような状況では、専門家である弁護士に代理人として交渉を依頼することが、円満かつ妥当な金額での解決につながります。
まとめ
自転車は便利な乗り物ですが、一歩間違えれば、被害者としても加害者としても、人生を左右する大きなリスクを伴います。
被害者になった場合は、加害者の保険加入状況をいち早く確認し、ご自身の権利を正しく主張する必要があります。加害者になってしまった場合は、高額な賠償責任を負う可能性があることを自覚し、誠実に対応しなければなりません。
どちらの立場であっても、当事者同士での解決が困難な場合は、法律の専門家である弁護士に相談することが、最善の解決への近道となります。
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