2025/08/22 コラム
不倫慰謝料請求の時効は3年?20年?起算点と時効を止める方法
はじめに
「パートナーの不倫に気づいていたけれど、ショックで何も手につかず、時間だけが過ぎてしまった…」
「ずっと前に終わったはずの不倫の事実を、最近になって知った…」
不倫の慰謝料を請求する権利は、永久に認められるわけではありません。法律には「時効」という制度があり、一定期間が経過すると、その権利が消滅してしまうのです。
大切な慰謝料請求権を失わないために、時効のルールについて正しく理解しておきましょう。この記事では、不倫慰謝料請求権の時効期間、カウントが始まる「起算点」、そして時効の完成を阻止する方法を解説します。
不倫慰謝料の時効期間は原則「3年」
不倫(不法行為)に基づく損害賠償請求権の時効は、原則として以下の2つの条件を満たした時から3年間と定められています。
時効のカウントが始まる「起算点」
「損害」および「加害者」を知った時
これを不倫のケースに当てはめると、以下の2つの事実を知った時点から、時効のカウントがスタートします。
- 配偶者が不倫をしているという事実
- その不倫相手が誰であるか(氏名・住所など、請求が可能な程度に特定できる情報)
例えば、配偶者の不倫には1年前に気づいていたものの、相手が誰なのか分からなかった場合、時効はまだ進行しません。その後、不倫相手の身元が判明した時点から、3年間の時効期間のカウントが始まります。
もう一つの時効「20年」とは?
上記の3年の時効とは別に、「除斥期間」と呼ばれるもう一つの時効期間があります。これは、不倫行為があった時から20年が経過すると、たとえ被害者がその事実や相手を知らないままであっても、慰謝料を請求する権利が完全に消滅するというルールです。
例えば、30年前に配偶者が不倫していたという事実を日記などで初めて知ったとしても、不倫行為から20年以上が経過しているため、残念ながら慰謝料を請求することはできません。
【注意】配偶者への慰謝料請求は時効の考え方が異なる
不倫相手ではなく、不倫をした「配偶者」に対して慰謝料を請求する場合、離婚するかどうかで時効の考え方が少し異なります。
- 離婚しない場合
原則通り、「不倫の事実」と「不倫相手」を知った時から3年です。 - 離婚する場合
不倫の事実を知ってから3年が経過していたとしても、離婚が成立した日から3年以内であれば、離婚自体による精神的苦痛への慰謝料として請求することが可能です。
時効の完成を阻止する方法(完成猶予と更新)
「時効が完成しそうだ!」という場合でも、諦める必要はありません。法的な手続きを取ることで、時効の進行をストップさせたり、リセットしたりすることができます。
催告(時効の完成猶予)
内容証明郵便で慰謝料の支払いを請求(催告)します。これにより、時効の完成が6ヶ月間猶予されます。ただし、これは一時しのぎの措置であり、この6ヶ月の間に後述の裁判上の請求などを行う必要があります。
裁判上の請求(時効の更新)
訴訟の提起や民事調停の申立てを行うと、その手続きが終了するまで時効の完成が猶予され、判決などで権利が確定した場合には、その時から新たに時効が進行(更新)します。
債務の承認(時効の更新)
不倫をした側(配偶者や不倫相手)が、慰謝料の支払い義務があることを認めると、時効は更新され、その時点から新たに3年のカウントが始まります。口頭での承認でも有効ですが、証拠として残すために、「慰謝料として〇〇円を支払います」といった内容の念書(債務承認書)などを書いてもらうのが確実です。
まとめ
不倫慰謝料の請求権は、原則として「不倫の事実」と「不倫相手」を知った時から3年で時効によって消滅してしまいます。
しかし、起算点の判断が難しいケースや、時効の完成を阻止する方法もありますので、「もう3年経ったから…」と安易に諦めてしまうのは早計です。
時効が成立しているかどうかの判断や、時効を止めるための手続きは、専門的な知識を要します。手遅れになって後悔する前に、少しでも不安を感じたら、速やかに弁護士にご相談ください。
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