2025/08/23 コラム
W不倫(ダブル不倫)の慰謝料請求|相場とリスク、求償権について解説
不倫関係にある当事者の双方が既婚者であるケースを、一般的に「W不倫(ダブル不倫)」と呼びます。
W不倫は、片方だけが既婚者である通常の不倫と比べて、登場人物が4人(あなた、あなたの配偶者、不倫相手、不倫相手の配偶者)に増えるため、法律関係が非常に複雑になります。
慰謝料を請求する際には、通常の不倫にはない特有のリスクや注意点が存在します。この記事では、W不倫の慰謝料相場、そして請求に踏み切る前に必ず知っておくべき「求償権」と「泥沼化のリスク」について解説します。
W不倫の慰謝料相場は通常の不倫と変わる?
結論から言うと、W不倫だからといって、慰謝料の相場が通常の不倫と比べて大幅に高くなったり、安くなったりすることは基本的にありません。
慰謝料の算定で最も重視されるのは、あくまで「不倫によって婚姻関係が破綻したか(離婚に至ったか)」という点です。したがって、相場も通常の不倫と同様に、以下が目安となります。
- 離婚する場合:100万円~300万円
- 離婚しない場合:50万円~100万円
ただし、W不倫という状況は、個別の事情として慰謝料の増減に影響を与える可能性があります。例えば、「相手の家庭も破壊した」という点で悪質性が高いと判断されて増額方向に傾くこともあれば、「お互い様」という側面から減額方向に傾くこともあり、ケースバイケースです。
W不倫の最大の特徴 「求償権」に要注意
W不倫の慰謝料請求において、最も注意しなければならないのが「求償権(きゅうしょうけん)」という権利です。
求償権とは?
不倫は、不倫をした2人による「共同不法行為」です。そのため、慰謝料を支払う義務も2人が連帯して負います。もし、一方だけが被害者に対して慰謝料を全額支払った場合、その人は、もう一方の加害者に対して「あなたの責任分を私に払いなさい」と請求することができます。これが求償権です。
【W不倫における求償権の具体例】
- あなた(Aさん)が、自分の夫(Bさん)の不倫相手(Cさん)に慰謝料200万円を請求しました。
- Cさんは、あなたに200万円を全額支払いました。
- その後、Cさんは「共同不法行為者」であるあなたの夫(Bさん)に対して、求償権を行使し、「あなたの責任分である100万円(200万円の半分)を私に支払ってください」と請求することができます。
- 結果として、あなたの夫(Bさん)はCさんに100万円を支払うことになります。
あなたが離婚せず、夫と家計を共にしている場合、せっかく不倫相手から200万円を受け取っても、家計から100万円が出ていくため、実質的に得られるのは100万円だけ、ということになってしまうのです。
W不倫で慰謝料請求する際に覚悟すべきリスク
求償権の問題に加えて、W不倫の慰謝料請求には以下のようなリスクが伴います。
1. 相手の配偶者から訴え返される「泥沼化」のリスク
あなたが不倫相手に慰謝料を請求したことをきっかけに、今度は不倫相手の配偶者が、あなたの配偶者に対して慰謝料を請求してくる可能性があります。
こうなると、A家がCさんに請求し、Dさん(Cさんの配偶者)がBさんに請求するといった、2つの家庭を巻き込んだ「訴訟合戦」に発展しかねません。解決までの時間も費用も、そして精神的な負担も計り知れないものになります。
2. 自分の不倫が配偶者に発覚するリスク
これは、あなたが不倫をしている当事者(有責配偶者)でありながら、相手の家庭を壊す意図で相手に慰謝料を請求しようとするような特殊なケースですが、請求行為によってご自身の不倫が配偶者に発覚し、逆にあなた自身が離婚や慰謝料を請求される立場になるリスクもあります。
まとめ
W不倫の慰謝料請求は、一見すると不倫相手からお金を受け取れるように思えますが、裏には「求償権」や「訴訟合戦のリスク」といった複雑な問題が潜んでいます。
感情に任せて請求に踏み切った結果、かえって事態が泥沼化し、ご自身の家庭が経済的にも精神的にも追い詰められてしまうことも少なくありません。
W不倫のトラブルを解決するためには、4者間の複雑な利害関係を調整し、法的に妥当な落としどころを見つける高度な交渉力が求められます。当事者だけで解決しようとせず、W不倫の解決実績が豊富な弁護士に相談し、今後の見通しやリスクを踏まえた上で、慎重に行動することが重要です。
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