コラム

2026/01/30 コラム

発信者情報開示請求とは?匿名の投稿者を特定する流れと費用、期間

はじめに

当事務所が運営する「損害賠償請求の解説」サイトをご覧いただき、ありがとうございます。

インターネット上の掲示板やSNSで、心当たりのない悪口やデマ、プライベートな情報を書き込まれてしまったとき、被害に遭われた方が強く願うのは「誰がこんなことを書いたのか突き止めたい」ということではないでしょうか。

匿名で行われるネット誹謗中傷に対抗するためには、まず相手が誰であるかを特定しなければなりません。そのための法的手続きが「発信者情報開示請求」です。

2022年の法改正による手続きの迅速化に加え、20245月に成立した「情報流通プラットフォーム対処法」により、被害者救済の枠組みはさらに大きく変化しています。

本記事では、ネット誹謗中傷の解決に不可欠な「発信者情報開示請求」について、最新の法律(情報流通プラットフォーム対処法)に基づく仕組みや流れ、そして当事務所に依頼された場合の費用目安について解説します。

発信者情報開示請求とは?
(情報流通プラットフォーム対処法)

発信者情報開示請求とは、「情報流通プラットフォーム対処法(正式名称:特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律)」に基づく法的な手続きです。

旧来の「プロバイダ責任制限法」が改正・改称されたものです。

インターネット上で他人の権利(名誉権、プライバシー権、肖像権など)を侵害する投稿が行われた場合に、被害者がプラットフォーム事業者(サイト管理者)や通信事業者(プロバイダ)に対して、その投稿を行った人物(発信者)の氏名や住所などの個人情報を開示するよう求める権利です。

インターネットは匿名性が高い空間ですが、完全に追跡不可能というわけではありません。この手続きを利用することで、匿名の投稿者を特定し、以下の法的措置をとることが可能になります。

  • 損害賠償請求(慰謝料請求):精神的苦痛に対する賠償金を支払わせる。
  • 刑事告訴:名誉毀損罪や侮辱罪などで警察に処罰を求める。
  • 再発防止の誓約:二度と同様の書き込みをしないよう約束させる。
  • 謝罪要求:公の場や直接的な謝罪を求める(ただし、強制はできません)。

逆に言えば、発信者情報開示請求を行わなければ、相手がどこの誰かわからないため、泣き寝入りせざるを得なくなってしまいます。

相手を特定するための「2つの壁」と仕組み

投稿者を特定するためには、インターネットの仕組み上、通常「2段階」のステップを踏む必要があります。これが、手続きを複雑にしている要因です。

1)コンテンツプロバイダ(CP)への請求

1の壁は、投稿が行われたウェブサイトやSNSの運営者(コンテンツプロバイダ)です。

例:X(旧Twitter)、InstagramGoogle、匿名掲示板の管理人など。

これらの運営者は、投稿者の「氏名や住所」までは把握していないことがほとんどです。彼らが持っている情報は、投稿に使われた「IPアドレス」と「タイムスタンプ(投稿日時)」などの「特定発信者情報」だけです。

そのため、まずはサイト運営者に対して、これらの情報の開示を求めます。

2)アクセスプロバイダ(AP)への請求

2の壁は、投稿者がインターネットに接続するために利用した通信会社(アクセスプロバイダ)です。

例:NTTドコモ、KDDIau)、ソフトバンク、プロバイダ(OCN, So-net等)など。

1段階で入手した「IPアドレス」と「投稿日時」をもとに、この通信会社を特定します。通信会社は、その時間にそのIPアドレスを使っていた契約者の情報(氏名、住所、電話番号など)を持っています。

そこで、次は通信会社に対して、契約者情報の開示を求めます。

この2つの壁を突破して初めて、投稿者の身元が判明するのです。

特定までの流れと期間(非訟手続の活用)

現在の実務では、2022年の法改正で導入された「開示命令申立(非訟手続)」を利用するのが一般的です。これにより、従来よりも迅速かつ一体的に手続きを進めることが可能になっています。

開示命令申立(非訟手続)

従来は、サイト運営者と通信会社に対して別々の裁判手続き(仮処分と訴訟)を行う必要がありましたが、新制度ではこれらを1つの手続きの中で一体的に行うことが可能です。

流れ

  1. 裁判所への申立て:被害者が裁判所に対し、サイト運営者を相手方として「開示命令」を申し立てます。同時に、次に判明するであろう通信会社への命令も予約しておきます(提供命令等の申立て)。
  2. IPアドレスの開示と通知:裁判所が認めれば、サイト運営者からIPアドレスが開示されます。さらに、サイト運営者から通信会社に対し、「被害者に情報を開示せよ」という命令が出されたことが通知されます。
  3. 通信会社での審理:通信会社が特定されると、そのまま同じ裁判手続きの中で、通信会社に対し契約者情報の開示可否が審理されます。
  4. 情報の開示:裁判所が開示決定を出せば、通信会社から被害者に氏名・住所が開示されます。

期間の目安

新制度を利用した場合、スムーズに進めば数ヶ月〜半年程度で特定に至るケースが増えています。従来の「仮処分+訴訟」という2段階の手続き(半年〜1年以上)に比べ、大幅な期間短縮が期待できます。

発信者情報開示請求にかかる費用相場

弁護士に依頼する場合の費用は、決して安くはありません。ここでは、当事務所(弁護士法人長瀬総合法律事務所)にご依頼いただいた場合の費用目安をご紹介します。

1)当事務所の弁護士費用目安

当事務所では、明確な料金体系を設けております。

  • 法律相談料
    • 初回60分 無料(以降30分ごとに5,500円)
  • 発信者情報開示請求(裁判手続)
    • 着手金:275,000円(税込)
    • 報酬金:275,000円(税込)
    • 上記は1件あたりの費用です。
    • ※2件目以降(同種の投稿など)は、1件ごとに追加費用が発生する場合があります。

特定に成功した場合の弁護士費用総額は、約55万円(税込)〜となります。

事案の難易度や相手方プロバイダの数によって変動する場合があります。

2)実費(裁判所への手数料など)

弁護士費用とは別に、裁判所に納める印紙代、予納郵券(切手代)、法人の資格証明書取得費用などの「実費」がかかります。

国内法人の場合は数万円程度(25万円前後)ですが、相手が海外法人(Google, Meta, X社など)の場合、資格証明書の取得や翻訳費用で追加の実費(数万円〜)がかかることがあります。

3)費用は相手に請求できるか?

ここが重要なポイントです。

「特定にかかった弁護士費用(調査費用)」は、損害賠償の一部として加害者に請求することが認められています。

ただし、裁判実務上、全額が認められるとは限りません。「相当因果関係のある範囲」として、実際にかかった費用の1割〜全額(多くは一部から半額程度)が認められる傾向にあります。

したがって、慰謝料と調査費用を回収できたとしても、最終的な金銭的収支(手元に残るお金)はプラスにならない、あるいはマイナスになる「費用倒れ」のリスクがあることは、あらかじめご理解いただく必要があります。

発信者情報開示請求が認められるための要件

「気に入らない書き込み」であれば何でも開示されるわけではありません。情報流通プラットフォーム対処法に基づき、以下の要件を満たす必要があります。

1. 権利侵害の明白性

投稿内容が、被害者の権利を違法に侵害していることが「明白」でなければなりません。

具体的には以下のようなケースです。

  • 名誉毀損:具体的な事実を挙げて、社会的評価を低下させる場合。
  • 侮辱:事実を摘示せずとも、著しく侮辱的な表現の場合(受忍限度を超えるもの)。
  • プライバシー侵害:他人に知られたくない私生活上の事実を勝手に公開された場合。
  • 肖像権侵害:容姿を無断で撮影・公開された場合。

単に「不快だ」「批判された」というだけでは、表現の自由との兼ね合いから権利侵害とは認められず、請求が棄却される可能性があります。

2. 正当な理由があること

被害者が発信者情報の開示を受けるべき正当な理由が必要です。

通常は「損害賠償請求をするため」「法的措置をとるため」であれば、正当な理由として認められます。

特定における最大のリスクは「時間の経過」

発信者情報開示請求において、最も注意すべきなのは「タイムリミット(ログ保存期間)」です。

通信ログの保存期間

通信会社(プロバイダ)が、契約者の通信ログ(誰がいつどのサイトにアクセスしたかという記録)を保存している期間は限られています。

  • 携帯キャリア(ドコモ、au、ソフトバンク等):約3ヶ月
  • 固定回線プロバイダ:約3ヶ月〜6ヶ月

この期間を過ぎてしまうと、通信会社側でログが自動的に削除されてしまいます。ログが消えてしまうと、たとえ裁判で勝訴しても、「記録がないので特定できません」という結果になってしまいます。

そのため、書き込みを見つけたら一刻も早く弁護士に相談し、手続きに着手することが何よりも重要です。

発信者情報開示請求が難しいケース

以下のようなケースでは、特定が困難になる場合があります。

  • ログ保存期間が経過している場合:前述の通り、時間が経ちすぎている場合。
  • 公衆無線LAN(フリーWi-Fi)からの投稿:カフェやホテルなどのフリーWi-Fiからの投稿の場合、特定できるのは「その施設」までであり、個人の特定は極めて困難です。
  • 海外の特殊なプロバイダや「Tor」等の匿名化ツールを経由している場合:高度な匿名化技術を使われている場合、追跡が不可能なことがあります。
  • 同定可能性がない場合:書き込みの内容から、「誰のことを書いているのか」が第三者に伝わらない場合、権利侵害が成立しません。

投稿者を特定した後の流れ

無事に投稿者の氏名と住所が開示された後は、被害回復のための具体的なアクションに移ります。

  1. 示談交渉
    相手方に内容証明郵便を送り、慰謝料の支払いや謝罪を求めます。相手が応じれば、早期解決となります。
  2. 民事訴訟(損害賠償請求)
    相手が無視や拒否をした場合は、裁判所に損害賠償請求訴訟を起こします。勝訴すれば強制執行も可能になります。
  3. 刑事告訴
    悪質な名誉毀損や業務妨害などの場合、警察に刑事告訴を行い、処罰を求めます。

 

まとめ

ネット誹謗中傷はスピード勝負。まずは専門家に相談を

「情報流通プラットフォーム対処法」への移行により、大規模プラットフォームに対する削除対応の迅速化などが期待されていますが、匿名の加害者を特定する「発信者情報開示請求」の本質は、依然として「時間との勝負」です。

  • 手続きは「非訟手続」が主流となり、期間は短縮傾向にある。
  • 特定までの期間は数ヶ月〜半年以上が目安。
  • 当事務所の費用目安は、着手金・報酬金あわせて55万円(税込)〜
  • 通信ログの保存期間があるため、早期着手が重要

「費用倒れになるかもしれないから」と諦めてしまう前に、まずは一度、専門家に相談することをお勧めします。当事務所では、初回60分の無料相談を実施しており、リスクや見通しを含めた丁寧なアドバイスを行っております。

弁護士法人長瀬総合法律事務所では、ネット誹謗中傷問題に特化した弁護士チームが、迅速な証拠保全から開示請求、その後の損害賠償請求までをトータルサポートいたします。

「書き込みを許せない」「犯人を特定したい」とお考えの方は、ログが消えてしまう前に、お早めに当事務所にご相談ください。


 

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