2026/02/06 コラム
SNS(X, Instagram等)での誹謗中傷|削除依頼と損害賠償請求の方法
はじめに
現代社会において、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)は私たちの生活に欠かせないインフラとなりました。X(旧Twitter)、Instagram、TikTok、LINEなど、誰もが気軽に情報を発信し、世界中の人と繋がれる利便性があります。
しかし、その手軽さと匿名性を悪用した「誹謗中傷」が後を絶ちません。「Xでデマを拡散された」「Instagramのストーリーで悪口を書かれた」「なりすましアカウントに勝手な投稿をされた」といった被害相談は、当事務所でも急増しています。
SNSでの誹謗中傷は、拡散スピードが極めて速く、一度広がると完全に消し去ることが難しい(デジタルタトゥー)という恐ろしい特徴があります。だからこそ、被害に遭ったときは一刻も早い対応が必要です。
本記事では、主要なSNS(X, Instagram, LINE等)における誹謗中傷への対処法として、投稿の「削除」と、加害者への「損害賠償請求」の方法を、プラットフォームごとの特徴を交えて弁護士が解説します。
SNS誹謗中傷の恐ろしさと法的責任
SNSでの書き込みは、単なる「個人の感想」や「愚痴」では済まされない場合があります。内容によっては、以下の法的責任を問える可能性があります。
問われる法的責任
- 名誉毀損(めいよきそん):公然と事実を摘示し、社会的評価を下げる行為。
- 侮辱(ぶじょく):「バカ」「ブス」など、事実を示さずに罵倒する行為。
- プライバシー侵害:住所、職場、家族の写真など、私生活の秘密を無断で公開する行為。
- 肖像権侵害:容姿を無断で撮影・公開する行為。
- なりすまし(アイデンティティ盗用):本人になりすましてアカウントを作成し、社会的評価を下げる投稿をする行為。
SNS特有のリスク「拡散」
SNS、特にX(旧Twitter)などは「リツイート(リポスト)」機能により、悪意のある投稿が瞬く間に拡散されます。
重要なのは、「拡散した人(リツイートした人)」も、場合によっては法的責任を問われる可能性があるという点です。元の投稿をした人だけでなく、安易に同調して拡散した人も損害賠償の対象になり得ることは、裁判例でも認められています。
まずやるべきこと:投稿の削除依頼
自分に対する悪口やプライバシー情報が掲載されているのを見つけたら、被害の拡大を防ぐために、まずは「削除」を目指します。
(1)SNS上の「通報フォーム」を利用する
ほとんどのSNSには、各投稿やアカウントに対して「報告する」「通報する」という機能が備わっています。
まずはこれを利用し、プラットフォームの運営側に「利用規約違反」として削除を求めます。
- X(旧Twitter):「ツイートを報告する」から、攻撃的な行為や個人情報の投稿を選択して報告します。
- Instagram:投稿右上のメニューから「報告する」を選択します。
- LINE:タイムライン(VOOM)等の投稿メニューから通報します。
【注意点】
この方法は手軽ですが、必ずしも削除されるとは限りません。
SNS運営側は、毎日膨大な数の通報を受けており、明らかに規約違反(殺害予告や児童ポルノなど)でない限り、表現の自由を考慮して削除に応じないケースも多々あります。また、削除されたとしても、誰が通報したかは相手に通知されませんが、「消された」ことで相手が逆上し、別の場所で書き込みを再開するリスクもあります。
(2)裁判所の「仮処分」手続きを利用する
通報しても削除されなかった場合、法的手段として裁判所に「削除仮処分命令申立」を行います。
これは通常の裁判(訴訟)よりも迅速な手続きで、裁判所が「違法である」と判断すれば、プラットフォーム側に対して削除命令が出されます。
SNSの運営会社(X社やMeta社など)の多くは海外法人ですが、日本の裁判所での手続きに従う傾向にあります。法的拘束力があるため、任意の削除依頼よりも確実性が高い方法です。
加害者を特定し、損害賠償を請求する方法
削除するだけでは気が済まない、受けた精神的苦痛に対して慰謝料を請求したい、という場合は、匿名の投稿者を特定する必要があります。これを「発信者情報開示請求」といいます。
特定までの基本的な流れ
SNSでの特定は、一般的に以下のステップを踏みます。
- SNS運営会社へのIPアドレス開示請求
まず、X社やMeta社などのSNS運営会社に対し、投稿に使われた「IPアドレス」と「タイムスタンプ」の開示を求めます(現在は裁判上の手続きで行うのが一般的です)。 - 通信会社(プロバイダ)の特定
開示されたIPアドレスから、「ドコモ」「au」「ソフトバンク」などの接続プロバイダを割り出します。 - プロバイダへの契約者情報開示請求
プロバイダに対し、その日時にそのIPアドレスを使っていた契約者の氏名・住所の開示を求めます。 - 損害賠償請求(示談交渉・裁判)
特定された相手に対し、内容証明郵便を送るなどして慰謝料を請求します。
「ログイン型」SNSの注意点
XやInstagramのような、IDとパスワードでログインして利用するサービスの場合、「ログイン時」のIPアドレスが重要になります。
投稿時のIPアドレスが保存されていない場合でも、ログイン時のIPアドレスから特定できる可能性があります。これを追跡するには高度な専門知識が必要となります。
プラットフォーム別:誹謗中傷対策のポイント
各SNSには機能上の特徴があり、それに応じた対策が必要です。
① X(旧Twitter)
- 特徴:拡散力が強く、匿名性が高いため攻撃的になりやすい。「リポスト」による二次被害が多い。
- 対策:
- なりすまし:アイコンやプロフィールを似せた偽アカウントによる被害も多いです。商標権侵害や肖像権侵害を根拠に削除・開示を求めます。
- 証拠保存:投稿ごとの個別URLを必ず保存してください。
② Instagram(インスタグラム)
- 特徴:写真や動画がメイン。24時間で消える「ストーリーズ」や、ライブ配信での誹謗中傷が増えています。
- 対策:
- ストーリーズ:24時間で自動的に消えてしまうため、発見したら即座にスクリーンショットや画面録画で証拠を残すことが命綱です。投稿が消えてしまうと、技術的にログの追跡が困難になります。
- DM(ダイレクトメッセージ):1対1のDMでの悪口は、「公然性」がないため名誉毀損にはなりにくいですが、脅迫罪やストーカー規制法違反に該当する可能性があります。
③ LINE(ライン)
- 特徴:クローズドなコミュニケーションツールですが、「グループトーク」や「LINE VOOM(旧タイムライン)」、「オープンチャット」でのトラブルがあります。
- 対策:
- 公然性の有無:1対1のトークや少人数のグループでの悪口は、名誉毀損(公然性が必要)の成立が難しい場合があります。一方、オープンチャットや大人数のグループ、全体公開のVOOMであれば、法的責任を問える可能性が高まります。
- スクショ:相手の表示名だけでなく、アイコンをタップして表示されるプロフィール画面も保存しておくと、特定の助けになります。
④ TikTok / YouTube
- 特徴:動画による誹謗中傷。コメント欄での中傷も多いです。
- 対策:
- 動画の保存:動画自体が削除されると証拠がなくなるため、画面録画などで動画そのものを保存しておく必要があります。
- コメント:どの動画に対するコメントなのかが分かるように、動画URLとコメント部分をセットで証拠化します。
重要なのは「証拠の保全」
弁護士に相談する前に、ご自身で必ずやっていただきたいのが「証拠の保存(スクリーンショット)」です。
ネット上の情報は、加害者がアカウントを消したり投稿を削除したりすると、一瞬で消えてしまいます。証拠がなければ、法的措置をとることは不可能です。
正しい証拠の残し方
単にスマホで画面を撮るだけでは、証拠として不十分な場合があります。以下の要素が全て入るように撮影・保存してください。
- 投稿の内容全体(文章、画像)
- 投稿の日時(「2時間前」などの表記ではなく、カーソルを合わせて正確な日時が表示される状態が望ましい)
- 投稿者の情報(ユーザー名、アカウントID、プロフィール画面)
- URL(その投稿の個別URL。アプリではなくブラウザで開くと表示されます)
【重要ポイント】
スマホアプリではなく、パソコンのブラウザ(ChromeやSafariなど)で表示させ、URLバーが見える状態でPDF保存またはスクリーンショットを撮ることが確実です。
また、相手をブロックしてしまうと、相手のプロフィールや投稿が見られなくなり、URLが取得できなくなるリスクがあります。証拠保全が終わるまではブロックしないようにしてください。
SNSの誹謗中傷、弁護士に依頼するメリット
「運営に通報したけれど無視された」「海外の会社相手に手続きするのは難しそう」
そう感じた場合は、お早めに弁護士に相談することをお勧めします。
(1)法的評価による的確な主張
単に「傷ついた」と訴えるだけでは、法的な削除や開示は認められません。「どの投稿が」「どの権利を」「どのように侵害しているか」を、法的な論理構成で主張する必要があります。弁護士は、過去の裁判例に基づき、説得力のある書面を作成します。
(2)精神的負担の軽減
加害者との直接のやり取りや、煩雑な法的手続きを弁護士に任せることで、被害者の方は精神的なストレスから解放され、日常生活を取り戻すことに専念できます。
まとめ:SNS被害は泣き寝入りせず相談を
SNSでの誹謗中傷は、顔が見えない分、言葉の暴力が過激になりがちです。
「ネットのことはよくわからないから」「相手が誰かわからないから」と諦める必要はありません。
- まずは証拠(URL付きのスクショ)を撮る。
- SNS運営に通報(削除依頼)をする。
- 削除されない、または特定して慰謝料請求したい場合は弁護士に相談する。
この手順を踏むことで、解決への道は必ず開けます。
特に、犯人特定のためのログ保存期間(アクセスログ)は、携帯キャリアの場合約3ヶ月と非常に短いです。Instagramのストーリーズのように24時間で消えるものもあります。「もう少し様子を見よう」と思っている間に、特定するための重要な証拠が消えてしまう可能性があります。
弁護士法人長瀬総合法律事務所では、SNSトラブルに精通した弁護士が、X、Instagram、LINE、YouTubeなど、各プラットフォームの特性に合わせた最適な解決策をご提案します。
削除請求から発信者情報開示請求、その後の損害賠償請求まで、ワンストップでサポートいたします。
SNSでの心ない書き込みにお悩みの方は、手遅れになる前に、当事務所までご相談ください。
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