2025/01/19 学校事故
通学中の事故における学校の責任と通学路の安全確保
被害者・保護者が知っておくべき賠償請求のポイント
はじめに
小学生から高校生まで、多くの子どもたちが毎日利用する通学路。特に近年は交通事故や不審者の出没など、子どもの安全を脅かすリスクが社会問題となっています。通学途中に事故が起きた場合、子ども自身や保護者は「学校が責任を負うのか、それとも通学路は自己責任なのか」と戸惑われることも多いでしょう。
本稿では、通学中に発生した事故について、学校の法的責任や損害賠償請求の可否、また保護者としての注意点を解説していきます。通学時間帯に万が一の出来事があったとき、どのように対応すればいいのか、ご参考になれば幸いです。
Q&A
通学路で子どもが交通事故に遭った場合、学校の責任はどの程度認められますか?
通学路における交通事故は、加害者(自動車や自転車の運転者)側の責任が大きくなるのが一般的です。ただし、学校が通学路の危険を事前に把握しておきながら適切な指導を怠っていたり、極めて危険な道を使用させていたりする場合には、学校側に注意義務違反が問われる可能性もあります。
公立学校と私立学校で、通学中の事故対応は異なりますか?
通学路で発生した事故の場合でも、公立学校であれば地方公共団体(市町村など)が設置者となり、国家賠償法による請求が考えられます。一方、私立学校であれば学校法人が相手方となるのが通常です。ただし、実際に損害賠償責任が発生するかは、学校側の過失が認められるかどうかがポイントとなります。
通学路が危険だからといって、保護者が学校を訴えられるのでしょうか?
「通学路が危険」という理由だけで直ちに学校に賠償責任が生じるわけではありません。学校や教育委員会が危険箇所を把握していながら改善を怠った場合や、児童・生徒に対する通学指導(安全教育)に重大な欠陥があった場合など、具体的な過失が認められた時に初めて学校側の責任が争点となります。
登下校時の事故で加害者が不明の場合はどうしたらいい?
ひき逃げなどで加害者が不明の場合、被害者自身が加入している保険(自動車保険の「無保険車傷害保険」等)でカバーできる場合があります。また、国の「政府保障事業」など、公的救済制度を利用できる可能性もあるため、詳しくは弁護士や保険会社に相談してみるとよいでしょう。
通学路以外で事故が起きたら、学校は一切関係ない?
学校が指定したルートでない場所を児童・生徒が任意に利用していた場合、学校側の注意義務違反を問うことが難しい場合もあり得ます。ただし、あえて危険な道を使わざるを得ない状況を学校が把握していたなどの事情があると、議論の余地が出てくる場合もあります。
解説
学校の責任が認められるケース
- 危険通学路の放置
例えば、歩道が狭い、照明が不十分、交通量が異常に多い場所を通学路として指定しているにもかかわらず、安全対策の改善や生徒への指導を怠った場合、学校や教育委員会に過失責任が生じる可能性があります。 - 通学指導の欠如
小学生など低年齢の児童に対しては、特に「横断歩道の渡り方」「信号無視の危険性」など基本的な交通ルールを教える義務があります。もし指導が行われていない、または明らかに不十分だった場合、学校の対応が問われることもあります。
損害賠償請求の流れ
- 事故の記録と証拠収集
事故に遭ったら、まずは警察へ連絡し、事故証明書を取得します。治療費や通院記録、診断書なども後の交渉・裁判で重要な証拠となります。 - 加害者や保険会社との交渉
通学事故の場合、加害車両の運転者やその保険会社が賠償義務を負うのが一般的です。学校の責任が疑われる場合でも、まずは加害者側の保険で補償がどこまでカバーされるかを確認します。 - 学校側との示談交渉
もし学校側にも過失があると考えられる場合は、並行して学校や教育委員会(公立の場合)、あるいは学校法人(私立の場合)と示談交渉を行うことになります。 - 裁判での争い
示談で合意できない場合は、国家賠償請求や民事訴訟に移行します。裁判では通学指導や危険箇所の把握・改善状況などが詳細に検証され、学校側の過失の有無が判断されます。
保護者が気をつけるポイント
- 日頃の安全教育
学校だけでなく、保護者も子どもに対して交通ルールを守る意義をしっかり伝えることで、事故を未然に防ぐ可能性が高まります。 - 危険箇所の情報共有
地域やPTAと連携し、危険な通学路情報を共有することで、学校や自治体に対策を要望しやすくなります。 - 定期的な見直し
通学路が新たに整備されたり、交通量が変化したりすることもあります。年度の途中でも、安全面を確認してルート変更を検討するなど柔軟に対応しましょう。
弁護士に相談するメリット
- 複合的な責任関係を整理
通学事故では、加害者・保険会社・学校・自治体など、関係者が多岐にわたることがあります。弁護士は、誰にどのような責任追及ができるかを整理し、最適な方針を提案します。 - 国や自治体への請求手続きに強い
公立学校の場合、国家賠償請求の手続きが必要になることがあります。弁護士であれば必要書類の作成や請求の流れを熟知しており、スムーズに進められます。 - 時間と精神的負担の軽減
子どものケガや通院手配で忙しい時期に、保険会社や学校との交渉を同時に行うのは大きな負担です。弁護士に任せることで、保護者は子どものケアに専念できます。 - 見落としがちな補償項目をカバー
通学事故の場合、怪我だけではなく、精神的な苦痛や将来的な後遺症なども考慮しなければなりません。弁護士がサポートすることで、請求漏れが起こりにくくなります。
まとめ
通学中の事故は、毎日の生活の中で起こりうるリスクです。加害者側の保険での対応が中心になるケースが多いものの、状況によっては学校側の責任が問われることもあります。まずは正確な事故状況の把握と証拠確保が欠かせません。その上で、学校や保険会社と冷静に示談交渉を進め、納得できる解決を目指しましょう。
弁護士法人長瀬総合法律事務所では、通学中の事故に関するご相談も承っています。「どこに責任を追及すればいいかわからない」「提示された示談金額が適正か不安」といったお悩みがある方は、ぜひ一度ご相談ください。
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