2026/04/30 コラム
名誉毀損による慰謝料の相場と判例の傾向
| 名誉毀損に基づく慰謝料の相場は、発言内容の悪質性、被害の程度、社会的地位などにより決定されます。個人の場合は50万~300万円、法人の場合は100万~500万円程度が一般的です。 |
Q. 名誉毀損の法的定義と成立要件
名誉毀損は、民法235条により「公然と事実を摘示して、人の名誉を傷つける行為」として定義されています。ただし、民法230条2項の「真実性」の抗弁により、発言内容が事実であれば、名誉毀損に問わない場合があります。
名誉毀損が成立するには、①公然性、②事実の摘示、③名誉性の侵害、④因果関係、の4要素が必要です。東京地方裁判所では、これら要素を厳格に審査する傾向があります。
インターネット上での発言による名誉毀損が社会問題化しています。SNS、掲示板、ブログなどでの悪質な発言により、被害者が深刻な精神的損害を受けるケースが増加しています。東京都内でのネット上の名誉毀損事件は年間数十件が訴訟化しており、適切な対応が重要です。
発言内容が「意見」である場合、名誉毀損の成立がより難しくなります。例えば「この製品は品質が悪い」という意見的発言と、「この製品は詐欺的に販売されている」という事実摘示は異なります。前者であれば表現の自由の保護が強く、後者であれば名誉毀損が成立しやすいという判例が確立しています。
Q. 個人と法人による名誉毀損慰謝料の相場
名誉毀損による慰謝料の相場は、被害者が個人か法人かにより大きく異なります。
個人の場合:慰謝料の相場は数十万円程度です。具体的な金額は、①発言内容の悪質性、②被害者の社会的地位、③被害の広がり、④被害者の対応の適切性などにより決定されます。
例えば、一般市民に対する根拠のない誹謗中傷の場合は50~100万円程度ですが、社会的地位の高い人物(公務員、企業幹部など)に対する重大な名誉毀損であれば、200万~300万円に達することもあります。
法人の場合:企業の信用毀損に対する慰謝料は、個人の場合より高額となることもあります。
ただし、発言者(加害者)が名誉毀損の悪質性を認識していなかった場合、慰謝料が減額される傾向があります。“ネット上での軽い気持ちでの投稿“であっても、法的には名誉毀損となる可能性があります。被害者の立場に立つと、慰謝料請求権が発生する可能性が高いのです。
Q. 東京地方裁判所の判例の傾向
東京地方裁判所では、名誉毀損事件について比較的被害者寄りの判断をする傾向があります。特に、ネット上での誹謗中傷に対しては、厳格な判断が示されています。
Q. 名誉毀損被害への対応方法
名誉毀損の被害に遭った場合、迅速な対応が重要です。被害が拡大するほど、精神的損害が増加し、対応がより困難になるからです。
第一段階:被害内容の記録です。ネット上の誹謗中傷の場合、スクリーンショットを取得し、発言日時、発言者の情報、アクセス数などを記録します。これらの記録は、後の訴訟で極めて重要な証拠となります。
第二段階:プロバイダへの削除要請です。プロバイダ責任制限法に基づき、違法情報(名誉毀損など)の削除を要請できます。これは無料で利用でき、迅速な削除が可能です。ただし、削除に応じるか否かはプロバイダの判断であり、削除が保証されません。
第三段階:弁護士への相談です。特に被害が深刻な場合、または削除要請に応じない場合、弁護士に相談することが重要です。弁護士は、仮処分の申し立て(緊急的な削除命令)やプロバイダへの法的な削除要請が可能です。
第四段階:損害賠償請求です。発言者が特定できた場合、または裁判を通じて発言者を特定した場合、損害賠償請求訴訟を提起できます。東京地方裁判所では、比較的被害者寄りの判断がされることが多いため、請求額の認容可能性が高いです。
Q. 弁護士による対応と発言者の特定
ネット上の誹謗中傷で発言者が匿名の場合、“発言者の特定“が最初の課題です。これは法的には非常に複雑な手続きです。
発言者特定の手続き:①プロバイダに対して、発言者のIPアドレス開示請求を行います。これは “プロバイダ責任制限法第4条第3項“に基づく法的請求です。②IPアドレスが判明した後、通信会社(NTTドコモなど)に対して、契約者情報の開示請求を行います。これは別途の訴訟手続きが必要です。
この手続きには通常3~6ヶ月を要します。また、弁護士費用も相応の負担が生じます。しかし、悪質な誹謗中傷に対しては、発言者の特定と損害賠償請求が有効な対抗手段です。
東京地方裁判所では、プロバイダへの情報開示請求が比較的認容されやすい傾向があります。特に、名誉毀損の違法性が明白な場合、プロバイダの開示拒否が認められにくくなります。
弁護士に相談する際は、誹謗中傷の具体的な内容、発言時期、被害の程度などを詳細に説明することが重要です。これらの情報から、弁護士が対応の優先順位と期待値を判断することができます。
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