2026/08/28 学校事故
対外試合や遠征・合宿中の事故|学校の管理責任はどこまで及ぶか
はじめに
部活動が活発になると、練習試合(対外試合)のための他校への遠征や、夏休みなどに行われる数日間の「合宿(宿泊研修)」など、学校の敷地外(校外)で活動する機会が増えます。
これらの校外活動は、生徒の技術向上やチームの結束に有益である一方、普段と異なる環境(他校の施設、宿泊所、移動中の交通機関)において、様々な事故(けが、交通事故、生徒間トラブル)が発生するリスクも高まります。
お子様が遠征先や合宿所で事故に遭われた保護者の方は、「学校の外での事故でも、学校の責任は問えるのか?」「先生の監督はどこまで及ぶのか?」と疑問に思われることでしょう。
結論として、対外試合や合宿が学校の教育活動の一環(学校行事、または部活動の公式活動)として行われている場合、学校の敷地外であっても、学校(引率教員・顧問)の安全配慮義務・監督義務は継続して問題となります。
この記事では、弁護士法人長瀬総合法律事務所が、対外試合や遠征・合宿といった校外活動における、学校の管理責任の「範囲」について、具体的な場面ごとに解説します。
Q&A
Q1: 部活動の対外試合のため、学校が手配した貸切バスで移動中に、バスが交通事故を起こし、子どもがけがをしました。責任はバス会社にありますか? それとも学校ですか?
この場合、バス会社と学校(学校設置者)の双方の責任を検討する余地があります。
まず、事故を起こしたバス会社(および運転手)は、事案に応じて「運行供用者責任」や「不法行為責任」を負う可能性があります。
同時に、学校(顧問)は、この遠征(移動)を企画・実施した主体として、生徒を安全に目的地まで引率する「安全配慮義務」を負っています。
例えば、(1) 信頼できるバス会社を選定する義務、(2) バス乗車中の生徒の行動(例:シートベルト着用、車内でのふざけあい)を監督する義務、などです。
したがって、被害者側としては、バス会社と学校(自治体・学校法人)のいずれに、どの法的根拠で請求できるかを整理して検討することになります。
Q2: 夏休みの合宿中、練習時間外の「自由時間」に、宿泊所の部屋で生徒同士がふざけあい、転倒して骨折しました。学校は「自由時間の出来事だ」と言っていますが、責任はないのでしょうか?
「自由時間」であったからといって、学校の責任がゼロになるわけではありません。
合宿(宿泊行事)において、学校(引率教員)の監督義務は、練習中だけでなく、食事、入浴、就寝、自由時間を含む活動全体について、場面に応じて求められます。
もちろん、自由時間中の監督の「密度」は、練習中よりは緩やかになりますが、(1) 生徒が危険な行為(例:ベランダに出る、部屋で暴れる)をしないよう事前に十分指導し、(2) 定期的に部屋を巡回(見回り)し、(3) 施設の危険箇所(例:壊れた窓、危険な設備)を事前に点検する、といったことが対策として考えられます。
これらの監督(特に巡回や事前指導)を怠っていた結果、予見し得る「ふざけあい」による事故が起きたのであれば、学校の監督義務違反が認められる可能性があります。
Q3: 練習試合で、相手校(A校)のグラウンドで試合をしました。A校のサッカーゴールが老朽化しており、倒れてきて、うちの子(B校)が負傷しました。責任はA校にありますか? うちの学校(B校)の顧問に責任はないのですか?
このケースも、A校(施設管理者)とB校(引率校)の双方に責任が問われる可能性があります。
まず、危険なゴールポストを放置していたA校(の設置者)には、施設の設置・管理の瑕疵(かし)に基づく賠償責任(公立なら国家賠償法2条、私立なら民法717条)があります。
しかし、それだけではありません。B校の引率顧問にも、自校の生徒の安全を守るため、試合(練習)を開始する前に、使用する施設・設備に明らかな危険がないかを点検する義務(安全確認義務)があります。
もし、そのゴールポストが「少し見ればサビや破損が分かる」状態だったにもかかわらず、B校の顧問がその点検を怠り、漫然と生徒に使用させたのであれば、B校(の設置者)も安全配慮義務違反として、A校とともに賠償責任を負う可能性があります。
解説
1. 「学校の管理下」とは何か?
学校の「安全配慮義務」は、「学校の敷地内(校舎・校庭)」だけで発生するものではありません。
法律上の「学校の管理下」とは、場所(地理的範囲)ではなく、「学校の教育活動(またはそれに密接に関連する活動)として行われているか」によって決まります。
対外試合や遠征・合宿は、学校長(または顧問)の許可と計画に基づき、顧問が引率して行われる、正規の「教育活動(部活動)」です。
したがって、移動、練習、宿泊、自由時間などの各場面において、生徒は「学校の管理下」にあると評価され、学校(顧問)は場面に応じた安全配慮義務を負います。
2. 校外活動における学校(顧問)の具体的な注意義務
学校の敷地外では、普段とは異なる様々なリスクが発生します。顧問には、これらのリスクを予見し、対策を講じる、より高度な管理責任が求められます。
移動中(交通機関)の監督義務
Q1の事例です。バスや電車での移動中は、交通事故のリスクだけでなく、生徒が公共の場でふざけてけがをしたり、他人に迷惑をかけたりしないよう監督する義務があります。
- 安全な交通手段の選定(例:信頼できるバス会社か、無理のない移動計画か)。
- 乗車中の生徒の行動監督(シートベルト、車内での移動禁止など)。
宿泊中(合宿所・ホテル)の監督義務
Q2の事例です。宿泊行事は、生徒が(特に夜間)教員の目から離れやすく、気が緩みやすいため、事故(転落、ふざけあい、火災)や、いじめ・ハラスメントの温床ともなり得ます。
- 施設の事前点検(避難経路の確認、ベランダや窓など危険箇所のチェック)。
- 生徒への厳格な事前指導(禁止事項の徹底、緊急時の連絡方法)。
- 夜間を含めた定期的な巡回(見回り)、点呼の実施。
- 生徒の健康管理(食事、睡眠、体調不良者の早期発見)。
他校・外部施設の利用時の監督義務
Q3の事例です。他校や公共の体育館、グラウンドを使用する際、引率教員は「場所を借りている」という意識だけでなく、「自校の生徒の安全責任者」としての意識を持たなければなりません。
- 練習(試合)開始前の、簡易な安全点検(ウォークスルー)の実施。
(例:「グラウンドに石やガラス片、穴はないか」「ゴールやネットは正しく設置されているか」「明らかな破損はないか」) - 施設の危険性(例:狭い、滑りやすい)に応じた、練習内容の変更・調整。
弁護士に相談するメリット
校外での事故は、関係者(例:学校、相手校、バス会社、宿泊施設)が複数にわたり、責任の所在が曖昧になりがちです。
1. 複雑な責任関係の整理
弁護士は、事故の状況を法的に分析し、誰が(例:引率した顧問か、施設管理者か、バス会社か)、どのような法的根拠(安全配慮義務違反か、施設瑕疵か、不法行為か)に基づき責任を負うのかを特定します。
被害に遭われた方が、請求すべき相手を間違えたり、一部の当事者を見逃したりしないようサポートします。
2. 学校側の「責任の範囲外」という反論への対抗
学校側が「学校の外だった」「自由時間だった」として責任を否定してきた場合、弁護士は、過去の裁判例に基づき、「学校の教育活動である以上、安全配慮義務は継続している」と法的に反論し、監督義務違反(例:巡回の不備、事前点検の懈怠)を具体的に主張します。
3. 証拠の収集・保全
遠征や合宿の事故では、「当日のスケジュール(行程表)」「引率マニュアル(安全のしおり)」「宿泊所の見取り図」「バス会社の契約書」などが重要な証拠となります。弁護士は、これらの証拠を学校や関係各所に開示請求し、学校側の安全管理体制に不備がなかったかを精査します。
まとめ
対外試合、遠征、合宿といった校外活動は、学校の「管理下」で行われる教育活動です。
引率する顧問(教師)の責任は、学校の敷地外であっても、移動中であっても、自由時間であっても、継続して問題となります。むしろ、普段と異なる環境だからこそ、より一層の安全配慮と具体的な監督行動が求められます。
校外活動中の事故について、学校側の「管理外だった」という説明に納得がいかない保護者の方は、弁護士法人長瀬総合法律事務所にご相談ください。
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