2026/08/27 学校事故
顧問(教師)が不在時の部活動で起きた事故|学校の監督義務違反と法的責任
はじめに
部活動は、顧問(教師)の指導のもとで行われる教育活動です。しかし、実際には「顧問が会議で遅れる」「出張で不在」「職員室で仕事をしている」など、顧問(指導者)が生徒の練習に立ち会っていない(監督していない)状態で、生徒だけで練習が行われているケースが散見されます。
そして、そのような指導者の「不在時」に、生徒がふざけてけがをしたり、危険な練習を試みて事故を起こしたりするケースが起こり得ます。
事故の報告を受けた保護者の方は、「なぜ顧問もいないのに練習させていたのか」「先生が見ていてくれれば事故は起きなかった」と、学校の管理体制に強い憤りを感じられることでしょう。
結論から言えば、顧問が不在の状況で危険を伴う練習をさせた場合、学校(顧問)の「安全配慮義務違反(監督義務違反)」が問題となる可能性があります。
この記事では、弁護士法人長瀬総合法律事務所が、顧問不在時に起きた部活動の事故について、なぜ学校の責任が問われるのか、その法的な根拠とポイントを解説します。
Q&A
Q1: 子どもが高校の部活動中、顧問が不在で生徒だけで練習していました。ふざけあっていて、用具が当たり失明しました。学校は「高校生なのだから自主性に任せた」と言っていますが、責任を問えませんか?
具体的事情によりますが、責任を問える可能性があります。学校側の「自主性に任せた」という説明だけで、法的責任が直ちに否定されるわけではありません。
部活動は、学校の教育活動の一環であり、学校(顧問)は、生徒の安全を確保する「安全配慮義務・監督義務」を負っています。高校生であっても発達段階にあり、指導者がいなければ、ふざけたり、危険な行動をとったりすることは予見し得ます。
顧問が、生徒だけで練習させるのであれば、(1) 練習内容を安全なもの(基礎練習など)に限定する、(2) 危険な用具は使用禁止にする、(3) 代わりの教員に監督を依頼する、といった代替措置を講じること等が考えられます。
これらの措置を講じないまま、生徒任せにしていた結果、事故が起きたのであれば、学校の「監督義務違反(過失)」が認められる可能性があります。
Q2: 顧問は練習場所にいましたが、グラウンド(道場)には出ず、顧問室(職員室)で別の仕事をしていました。この場合も「不在」と同じですか?
はい、法的には「不在」と同様に、「具体的な監督義務を果たしていない」として過失が問題となる可能性があります。
顧問の監督義務は、単に同じ敷地内に「いる」こと(物理的同席)ではありません。生徒がどのような練習をしているか、危険な兆候はないか、体調不良者はいないかを、具体的に注視・監視し、危険があれば直ちに介入・制止することです。
顧問が、本来監視すべき場所(グラウンドや体育館)から離れ、生徒の状況を把握できない顧問室などにいたのであれば、監督が不十分であったとして、安全配慮義務違反が問題となります。
Q3: 顧問が不在にする場合、学校(顧問)が取るべきだった「代替措置」とは何ですか?
顧問が、会議や出張などで「やむを得ず」練習に立ち会えない場合、学校(顧問)は、事故を防止するために、以下のいずれか(または複数)の措置を講じることが考えられます。
- 練習の中止
安全で確実な措置です。「監督者なき練習は認めない」と徹底すること。 - 代替監督者の配置
他の教員(副顧問など)に、監督を明確に依頼すること。 - 練習内容の制限
生徒だけでの練習を許可する場合でも、「乱取り・コンタクトプレー・試合形式は一切禁止」「基礎体力トレーニング(ランニング、素振り)のみ」など、危険性の低いメニューに限定し、それを徹底させること。 - 危険な用具の使用禁止
投てき物(ハンマー、やり)、球技のボール、マット器具など、危険な用具の倉庫に施錠し、使用を禁止すること。
これらの措置を何も講じなかった場合、学校の責任が問題となります。
解説
1. 部活動における顧問の「立会い・監督義務」
部活動は、学校の教育活動の一環として、学校の管理下で行われます。顧問(教師)は、学校が負う「安全配慮義務」を現場で実行する責任者です。
特に、運動部は、体育の授業以上に危険な練習(コンタクトプレー、高速のボール、専門的器具の使用など)を行うことが多く、顧問には、これらの危険性を熟知した専門家として、練習に原則として「立ち会い」(同席し)、生徒の活動を「監督」する法的義務があります。
この「立会い・監督義務」の目的は、以下の3点に集約されます。
- 危険な練習・行為の未然防止: 不適切な練習方法や、生徒同士のふざけあい、危険な用具の使用などを、その場で制止・指導すること。
- 安全な環境の確保: 練習場所や用具の安全点検を行うこと。
- 事故発生時の即時対応: 事故や体調不良が発生した場合、直ちに練習を中断させ、適切な応急処置・救急搬送を行うこと。
2. 「顧問不在」が「過失(監督義務違反)」となる法的根拠
顧問が不在(またはQ2のような「名ばかり監督」)の状態は、上記の3つの義務がすべて放棄された「安全管理上の空白」を生み出します。
これが「過失」となるかは、主に「予見可能性」と「結果回避可能性」の観点から検討されます。
① 予見可能性(事故を予測できたか)
顧問(教師)は、たとえ高校生であっても、指導者の監督がなければ「羽目を外してふざける」「危険な練習や悪ふざけ(例:柔道の禁止技を試す、バットを投げる)をする」「用具を不適切に扱う」といった行動に出る可能性があり、その結果として事故が起こり得ることを、当然に予見(予測)できたはずです。
② 結果回避可能性(事故を避けられたか)
もし顧問がその場に立ち会い、適切に監督していれば、生徒の危険な行為(Q1の「ふざけあい」など)を発見し、「やめなさい」と一言制止できたはずです。その制止があれば、今回の事故(失明)を回避できた可能性があります。
顧問が不在であったために、この「予見できた危険」を「回避する措置(制止)」が取れなかったのですから、顧問の不在(監督義務の放棄)と事故の発生との間には、明確な因果関係が認められ、学校の「過失(安全配慮義務違反)」が成立します。
3. 学校側の反論(「自主性」「信頼」)が通用しない理由
学校側は、Q1のように「高校生の自主性を重んじた」「生徒たちを信頼していた」と反論することがあります。
しかし、このような反論は、安全配慮義務違反を否定する事情として容易には認められません。
「自主性」や「信頼」は、あくまで「安全が確保された枠内」で育まれるべきものです。生徒の生命・身体の安全を危険にさらしてまで優先されるべき「自主性」はありません。
危険を伴う部活動において、生徒の安全を確保する体制(=顧問の立会い・監督)を構築することは、自主性の尊重とは関係なく、学校が負う最低限の法的義務です。
弁護士に相談するメリット
顧問不在時の事故は、学校側も「監督していなかった」という負い目がある一方で、「生徒が勝手にやったこと」として責任転嫁を図ろうとするケースも多く、交渉が難航しがちです。
1. 「監督義務違反」の法的主張の明確化
弁護士は、「顧問が不在であった」という事実そのものが、なぜ法的に「過失(安全配慮義務違反)」にあたるのかを、前述した「予見可能性」「結果回避可能性」や、過去の裁判例に基づき、論理的に構成して主張します。
学校側の「自主性」「信頼」といった反論に対し、事故予防に必要だった具体的措置を示して対応します。
2. 「代替措置」の不備の追及
弁護士は、顧問が不在であった事実だけでなく、Q3で挙げたような「代替措置(練習の中止、代替監督者の配置、練習内容の制限)」が講じられていたかを追及します。
これらの措置が一切取られていなかった事実を明らかにすることで、「学校(顧問)が取るべき措置を何一つ取らなかった(=過失が重大である)」ことを立証します。
3. 目撃証言(他の部員)の確保
顧問が「不在だった」こと、「ふざけあいが常態化していた」こと、「事故の具体的な状況」などは、その場にいた他の部員がよく知っています。弁護士が介入し、これらの証言を法的に有効な書面(陳述書)として確保することは、裁判になった場合に重要です。
まとめ
部活動における顧問(指導者)の「立会い・監督」は、生徒の安全を守るための義務です。
顧問が不在のまま練習が行われ、そこで事故が発生した場合、「生徒の不注意」だけでなく、安全管理上の空白を作り出した学校(顧問)の「監督義務違反」が問題となります。
「なぜ先生もいないのに練習をさせたのか」
「先生さえいれば、あの子はけがをしなかったはずだ」
そのようなお気持ちをお持ちの保護者の方は、学校の管理責任を明確にするため、弁護士法人長瀬総合法律事務所にご相談ください。
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