コラム

2026/08/20 コラム

遺産分割協議がまとまらない!「調停」「審判」の流れ・費用・期間を弁護士が解説

はじめに

相続が発生した際、遺言書がなければ、相続人全員の話し合いによって、誰がどの遺産を、どのように相続するかを決める必要があります。この話し合いが「遺産分割協議」です。

理想は、相続人全員が円満に合意し、協議がスムーズにまとまることですが、現実はそう簡単ではありません。それぞれの利害や長年の感情的なしこりが絡み合い、「協議が全く進まない」「話がこじれてしまった」というケースは、残念ながら非常に多く見られます。

当事者同士での解決が困難になったとき、法律は、家庭裁判所という中立・公平な第三者が関与する、次のステップを用意しています。それが「遺産分割調停」と「遺産分割審判」です。

この記事では、遺産分割協議がまとまらずにお困りの方のために、調停・審判とはどのような手続きなのか、その具体的な流れ、期間、そして必要となる費用について解説していきます。

最初のステップ「遺産分割協議」と、それがまとまらない理由

多くの場合、裁判所の手続きに進む前に、まず相続人全員での話し合い(遺産分割協議)を試みます。ただし、協議が困難な事情がある場合には、早期に家庭裁判所の手続きを検討することもあります。

しかし、以下のような理由から、協議が「不調(まとまらない状態)」に陥ることが少なくありません。

  • 感情的な対立:「長男だから多くもらうべきだ」「親の介護を一身に引き受けたのだから、その分を考慮してほしい(寄与分)」といった主張がぶつかり、感情的な対立が深まる。
  • 遺産の評価で揉める:不動産や非上場株式など、価格が明確でない遺産の評価額について、意見が一致しない。
  • 特定の相続人が非協力的:相続人の一人が、そもそも話し合いに応じない、連絡が取れない、あるいは非現実的な要求を繰り返して協議を妨害する。
  • 遺産の使い込みや特別受益が発覚:相続人の一人が被相続人の生前に多額の贈与(特別受益)を受けていたり、財産を使い込んでいたりした疑惑が浮上し、争点となる。

このような状況では、もはや当事者同士での冷静な話し合いは不可能です。そこで、家庭裁判所の力を借りることになります。

話し合いによる解決を目指す「遺産分割調停」

遺産分割協議がまとまらない場合、次のステップは、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てることです。(審判を申し立てた場合でも、家庭裁判所の判断で調停に付されることがあります。)

調停とは?

調停は、裁判のように白黒をはっきりさせる場ではありません。裁判官と調停委員で構成される調停委員会が、中立な立場で当事者の間に入り、あくまで話し合いによる円満な解決(合意)を目指す手続きです。

調停の具体的な流れ

  1. 申立て: 相続人の一人または複数人が、相手方のうち一人の住所地、または当事者が合意で定める家庭裁判所に、申立書と必要書類(戸籍謄本や財産目録など)を提出します。
  2. 1回調停期日の決定: 申立てから約12ヶ月後に、第1回の調停期日が指定され、各当事者に呼び出し状が送付されます。
  3. 調停期日当日:
    • 当事者は、原則として別々の待合室で待機します。
    • 調停委員が、まず申立人側の部屋に入り、言い分や希望を聞きます。次に、相手方側の部屋に移動し、同じように言い分を聞きます。
    • このように、調停委員が当事者の間を行き来する形で進行するため、感情的になりがちな相手と直接顔を合わせずに、冷静に話し合いを進められるという大きなメリットがあります。
  4. 調停の進行と終了:調停は、月1回程度のペースで開かれ、解決までには半年から1年以上かかることも珍しくありません。
    • 調停成立: 話し合いの結果、相続人全員が分割内容に合意すると、その内容をまとめた「調停調書」が作成され、調停は成立となります。この調停調書は、裁判の確定判決と同じ強力な法的効力を持ちます。
    • 調停不成立: これ以上話し合っても合意の見込みがないと判断されると、調停は「不成立」として終了します。

裁判官が判断を下す「遺産分割審判」

調停が不成立に終わった場合、手続きは自動的に「遺産分割審判」へと移行します。

審判とは?

審判は、当事者間の話し合いの場ではありません。各相続人が提出した主張書面や証拠資料に基づき、裁判官が、法律に則って、遺産の最も公平な分割方法を決定し、命令を下す手続きです。つまり、話し合いではなく、裁判所の法的な判断を仰ぐ場となります。

審判の特徴

  • 裁判官は、遺産の種類や性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態など、一切の事情を考慮します。
  • その上で、遺産をそのまま分ける「現物分割」、特定の相続人が遺産を取得し、他の相続人に代償金を支払う「代償分割」、遺産を売却して金銭で分ける「換価分割」といった方法の中から、最も適切と考える分割方法を命じます。
  • 裁判官が下した審判は、確定すると当事者を拘束し、当事者はその内容に従う必要があります。

調停・審判にかかる費用

① 裁判所に納める費用(実費)

  • 収入印紙:被相続人1人につき1,200円分と、非常に低額です。
  • 連絡用の郵便切手(予納郵券): 数千円程度(裁判所や当事者の数によって異なります)。
  • その他: 不動産の価値が争点になる場合など、裁判所が不動産鑑定を必要と判断した場合は、当事者がその費用(数十万円~)を負担する必要があります。

弁護士費用

弁護士に代理人を依頼した場合に発生します。料金体系は法律事務所によって様々ですが、一般的には、遺産の額に応じて算定される「着手金」と「報酬金」から構成されます。

  • 着手金: 案件に着手する際に支払う費用。
  • 報酬金: 最終的に確保できた遺産の額(経済的利益)に応じて、成功報酬として支払います。

まとめ

相続人同士の遺産分割協議が暗礁に乗り上げてしまった場合、感情的に対立を続けていても、時間だけが過ぎていき、問題は何も解決しません。そのようなときは、家庭裁判所の「調停」「審判」という、公平な第三者が関与する法的な手続きを利用することが、最終的な解決への道筋です。

これらの手続きは、法律に基づいた主張や証拠の提出が求められる専門的な場です。ご自身の正当な権利を確保し、精神的な負担を軽減するためにも、相続問題に精通した弁護士に依頼することをご検討ください。

弁護士は、あなたの代理人として、法的な観点から有利な主張を組み立て、複雑な手続きをすべて代行し、あなたが納得できる解決を迎えられるようサポートします。


 

【弁護士法人長瀬総合法律事務所のYouTubeチャンネル 】

企業法務に関する問題を解説したYoutubeチャンネルを運営しています。
ぜひご視聴・ご登録ください。 

リーガルメディアTVはこちら

【メールマガジンのご案内】

無料WEBセミナー開催のお知らせや、事務所からのお知らせをメールで配信しています。
ぜひこちらのご登録もご検討ください。

メールマガジンの登録はこちら

© 弁護士法人長瀬総合法律事務所 損害賠償専門サイト