2026/05/23 コラム
購入した家に欠陥が!契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)とは?
はじめに
「念願のマイホームを購入したのに、入居直後に雨漏りが見つかった」
「床下がシロアリの被害に遭っていることが判明した」
人生で最大の買い物である不動産購入。しかし、引き渡し後に予期せぬ欠陥(不具合)が見つかり、夢の生活が一転してトラブルの渦中に巻き込まれるケースは少なくありません。
かつて、このような不動産の欠陥については「瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)」という言葉が使われていましたが、2020年4月の民法改正により、現在は「契約不適合責任(けいやくふてきごうせきにん)」という新しいルールに変更されています。
この改正は単なる名称変更ではなく、買主(購入者)が売主に対して請求できる権利の範囲が大幅に拡大されたという点で、買主にとって非常に有利な変更と言えます。
本記事では、新しい「契約不適合責任」の仕組み、認められる5つの権利、そして損害賠償請求を成功させるためのポイントについて解説します。
はじめに
1. 「契約不適合責任」とは何か?
まずは、この聞き慣れない法律用語の意味を正しく理解しましょう。
(1) 「契約の内容と違う」場合の責任
契約不適合責任とは、文字通り「引き渡された目的物が、種類、品質または数量に関して契約の内容と適合しない」場合に、売主が買主に対して負う責任のことです(民法562条)。
以前の「瑕疵(かし)」という言葉は「傷、欠点」を意味していましたが、法改正により「契約書に書かれていること(合意した内容)と、実際の物が違うかどうか」が判断の基準になりました。
例えば、以下のようなケースが該当します。
- 「雨漏りなし」として契約したのに、雨漏りが発生した。
- 「更地渡し」の契約だったのに、地中に産業廃棄物が埋まっていた。
- 「隣地との境界は確定済み」と聞いていたのに、実際は境界紛争中だった。
(2) 旧法「瑕疵担保責任」との違い
2020年3月までの旧民法では、「隠れた瑕疵(買主が注意しても気づかなかった欠陥)」についてのみ責任を追及できました。
しかし、新法では「隠れていたかどうか(買主の過失の有無)」は要件ではなくなりました。重要なのはあくまで「契約内容と一致しているか」という客観的な事実です。
この変更により、買主は「自分が見落としていたから請求できないのでは?」と悩む必要が減り、契約書の内容を根拠に堂々と権利を主張できるようになりました。
2. 買主が請求できる「4つの権利」
契約不適合責任において、買主には旧法時代よりも多くの救済手段が用意されています。具体的には、以下の4つの権利を行使することができます。
(1) 追完請求権(修理・補修の請求)
これが最も基本的な権利です。「契約通りの完全な状態にしなさい」と求めることができます。
- 修補請求: 雨漏りを直す、シロアリを駆除する、壊れた設備を修理する。
- 代替物引渡請求: (建売住宅などでは難しいですが)同じ種類の別の商品と交換する。
まずは売主に対して、「直してください」と請求するのが第一歩となります。
(2) 代金減額請求権
もし、売主が修理に応じない場合、あるいは修理が不可能な場合に、「その分だけ安くしてください」と請求する権利です。
原則として、まずは「修理(追完)」を催告し、それでも対応してもらえない場合に初めて行使できます(例外として、修理不能が明らかな場合は直ちに請求可能)。
例:修理に100万円かかる雨漏りがあるが、売主が直さないため、売買代金から100万円を減額(返還)させる。
(3) 契約解除権
欠陥が重大で、「これでは家を買った目的が達成できない」という場合に、契約自体を白紙に戻す(解除する)権利です。
契約が解除されれば、売主は受け取った代金を全額返還し、買主は家を返還します。
- 催告解除: 修理を求めたのに応じない場合。
- 無催告解除: 建物が倒壊寸前で居住不能など、修理しても契約の目的が達成できない場合。
ただし、不適合の程度が「軽微」である場合は、解除までは認められず、修理や金銭での解決になります。
(4) 損害賠償請求権
ここが重要なポイントですが、上記の3つ(修理・減額・解除)は、売主に過失(落ち度)がなくても請求できます。
しかし、4つ目の「損害賠償請求」については、売主に過失(帰責事由)がある場合に限り認められます。
請求できる範囲
- 信頼利益: 契約が有効だと信じたために費やした費用(登記費用、調査費用など)。
- 履行利益: 契約通りに履行されていれば得られたはずの利益(転売利益や、完全な状態で住めたことの利益)。
旧法では「信頼利益」に限られる傾向がありましたが、新法では「履行利益」まで含めて広く請求できる可能性があります。例えば、雨漏りによって家財道具が濡れてダメになった場合、その家財の損害も請求対象になり得ます。
3. 具体的なトラブル事例と判断基準
どのようなケースで契約不適合責任を問えるのか、具体的な事例を見てみましょう。
ケースA:雨漏り
中古住宅売買で最も多いトラブルです。
- 契約書: 「雨漏り:無」と記載、あるいは特記事項なし。
- 事実: 入居後の大雨で天井から水漏れが発生。
- 判断: 「雨漏りしない家」という通常の品質を備えていないため、契約不適合となります。
- 注意点: 築古物件などで、契約書(重要事項説明書)に「過去に雨漏りあり(修理済み)」「現況有姿(現状のまま引き渡す)」と明記され、買主がそれを承諾して購入していた場合は、責任を問えない可能性があります。
ケースB:シロアリ被害
- 事実: リフォーム業者を入れた際に、床下の土台がシロアリに食われていることが発覚。
- 判断: 建物の構造耐力上主要な部分に関わる欠陥であり、契約不適合となります。
- 対応: 駆除費用および、食害された木材の交換・補強工事費用を請求できます。
ケースC:地中埋設物(ガラ、廃棄物)
- 事実: 購入した土地に家を建てようとしたら、地中からコンクリート片や古井戸が出てきた。
- 判断: 土地としての通常の品質を欠いており、契約不適合です。
- 対応: 撤去費用や、工事遅延による損害を請求します。
ケースD:心理的瑕疵(事故物件)
- 事実: 購入後、近隣住民から「あそこは以前、自殺があった部屋だ」と聞かされた。
- 判断: 心理的嫌悪感により住み心地を害する場合も「品質」の不適合に含まれます。ただし、事案発生からの経過年数や、都市部か地方かなどの事情を総合考慮して判断されます。
4. 知っておくべき「期間制限(時効)」
契約不適合責任を追及するには、時間的なリミットがあります。これを知らずに放置していると、権利が消滅してしまうため要注意です。
(1) 種類・品質に関する不適合の場合
最も一般的な「雨漏り」「シロアリ」「設備の故障」などは、これに該当します。
買主が不適合を知った時から1年以内に売主に通知しなければならない(民法566条)。
重要なのは「引き渡しから1年」ではなく「知った時から1年」である点です。入居して3年後に雨漏りに気づいた場合、そこから1年以内に通知すれば権利は保たれます。 ただし、「引き渡しから10年」(消滅時効)が経過すると、そもそも権利が消滅します。
(2) 数量・権利に関する不適合の場合
「土地の面積が契約より狭かった(数量不足)」「他人の抵当権がついたままだった(権利不適合)」といったケースです。
この場合、上記の「1年以内の通知」という制限はありません。一般的な消滅時効(知った時から5年、引き渡しから10年)が適用されます。
(3) 「特約」による期間短縮に注意
法律上は上記の通りですが、実際の不動産取引では、契約書で期間を短縮する「特約(免責条項)」が結ばれることが一般的です。
売主が個人の場合
「契約不適合責任は引き渡しから3ヶ月間のみ」「一切の責任を負わない(免責)」といった特約が有効とされます。まずは売買契約書を確認してください。
ただし、売主が欠陥を知っていたのに告げなかった場合は、免責特約は無効となり、責任を追及できます。
売主が不動産業者(宅建業者)の場合
宅地建物取引業法により、買主に不利な特約は無効とされます。
最低でも「引き渡しから2年以上」の期間を設けなければなりません。もし「現状有姿」「責任を負わない」といった特約があっても、それは無効となり、民法の原則(知った時から1年)が適用されます。
売主が事業者(宅建業者以外)で買主が個人の場合
消費者契約法により、事業者の責任を「全部免除」する特約は無効となります。
5. 契約不適合責任を追及する具体的な流れ
欠陥を発見した場合、焦らず、しかし迅速に行動する必要があります。
ステップ1:証拠の保全
まずは被害状況を客観的に記録します。
- 被害箇所の写真・動画を撮影する。
- リフォーム会社や建築士などの専門家に調査を依頼し、見積書や調査報告書を作成してもらう。
- やってはいけないこと: 売主に連絡せず、勝手に修理してしまうこと。証拠がなくなり、「本当に最初から壊れていたのか?」と争われた際に不利になります。
ステップ2:契約書の確認
売買契約書と重要事項説明書を読み返します。
- 「契約不適合責任」の条項(または瑕疵担保責任の条項)はどうなっているか?
- 通知期間(期間制限)はいつまでか?
- その不具合について「容認事項」として記載されていないか?
ステップ3:通知(内容証明郵便)
期間制限(1年以内など)があるため、まずは「不適合があること」を売主に確実に伝えます。
電話や口頭では「聞いていない」と言われるリスクがあるため、「内容証明郵便」で通知します。通知には以下の内容を含めます。
- 不適合の具体的な内容
- どのような請求をするか(修補請求など)
- 回答の期限
ステップ4:交渉
売主(または仲介業者)と、修理方法や費用負担について話し合います。
売主が誠実に対応すれば示談書を作成して解決ですが、
「経年劣化だ」「引き渡し後にお前が壊したんだろう」
などと反論され、交渉が難航するケースも多々あります。
ステップ5:調停・訴訟
話し合いで解決しない場合、裁判所の調停や訴訟を利用することになります。建築紛争は専門性が高いため、この段階では弁護士のサポートが有用です。
6. 不動産トラブルを弁護士に相談するメリット
「買ったばかりの家に欠陥がある」という事実は、精神的にも大きなショックです。その上、専門知識を持つ不動産業者や、責任逃れをする売主と交渉するのは大変な労力を要します。
「契約の解釈」は専門家の領域
契約不適合責任で重要なのは、「契約書にどう書いてあるか」と「社会通念上、その契約内容はどう解釈されるべきか」の判断です。
「現状有姿」と書いてあれば絶対に請求できないわけではありません。条項の有効性や解釈について、弁護士は法的な観点から依頼者の権利を守ります。
建築士との連携
当事務所のような不動産問題に注力する法律事務所では、建築士や土地家屋調査士などの専門家と連携しています。建物の欠陥という技術的な問題を、法的な主張(準備書面)に翻訳し、裁判所を説得する証拠を構築します。
適正な損害額の算定
修理費用だけでなく、仮住まいの費用、調査費用、慰謝料(認められるハードルは高いですが)など、請求できる損害の範囲を漏れなく算定します。
まとめ
泣き寝入りする前に専門家の診断を
契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)は、欠陥住宅をつかまされてしまった買主を救済するための強力な武器です。しかし、その権利を行使するためには、以下の3つの壁を乗り越える必要があります。
- 契約内容の壁: 契約書と現状の不一致を証明できるか。
- 期間の壁: 通知期間や特約の期限内にアクションを起こせるか。
- 立証の壁: その不具合が「引き渡し時から存在した」あるいは「契約の本質的な不適合である」と言えるか。
「中古だから仕方がないと言われた」
「契約書に免責と書いてあるから無理だと思った」
そう諦めてしまう前に、まずは契約書をお手元にご用意の上、弁護士にご相談ください。
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