2026/03/13 コラム
リベンジポルノ被害に遭ったら|削除要請と犯人特定、損害賠償請求
はじめに
インターネットトラブルの中でも特に緊急性が高く、被害者の精神的負担が大きい「リベンジポルノ」をテーマに解説します。
「元交際相手が、別れ話のもつれから性的な画像をネットに晒した」
「自分だけの秘密だと思って送った写真が、掲示板で拡散されている」
もし今、このような被害に遭われていたとしても、決してご自身を責めないでください。悪いのは、信頼を裏切り、卑劣な行為に及んだ加害者です。
リベンジポルノは、一度拡散してしまうと回収が困難な「デジタルタトゥー」となり得ますが、迅速に法的手続きをとることで、画像の削除や加害者の特定、そして刑事・民事双方での責任追及が可能です。
本記事では、リベンジポルノ被害に遭った直後になすべき初期対応から、画像の削除方法、加害者を特定して損害賠償を請求するまでの手順を解説します。
リベンジポルノ被害に遭ったら
削除要請と犯人特定、損害賠償請求
1. リベンジポルノとは?法律上の定義と違法性
一般的に「リベンジポルノ」とは、元交際相手や配偶者などが、復讐や嫌がらせを目的として、相手の性的な画像や動画を不特定多数の人間に公開する行為を指します。
この行為は、プライバシー権や肖像権の侵害であることはもちろん、明確な「犯罪」です。
リベンジポルノ防止法による規制
2014年に施行された「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律(通称:リベンジポルノ防止法)」では、以下の行為を処罰の対象としています。
公表罪
第三者が撮影対象者を特定できる方法で、私事性的画像記録(性交や性器等が写った画像・動画)を、不特定または多数の者に提供・公然陳列すること。
罰則
3年以下の拘禁刑 または 50万円以下の罰金
- 公表目的提供罪
公表させる目的で、性的な画像を特定の人(メディアや友人など)に提供すること。 - 罰則: 1年以下の拘禁刑 または 30万円以下の罰金
たとえ撮影当時に同意があったとしても、それを無断で公開する行為は許されません。また、リベンジポルノ防止法以外にも、刑法上の「名誉毀損罪」「わいせつ物頒布罪」「脅迫罪」などに問われる可能性があります。
2. 被害発覚後、最初に行うべき3つの初期対応
パニックになるお気持ちは痛いほどわかりますが、冷静かつ迅速な行動が被害を最小限に食い止めます。以下の3ステップを直ちに実行してください。
ステップ1:証拠の保全
「見たくない」「怖い」という気持ちから、すぐに画面を閉じたり、加害者に削除を懇願したりしたくなるかもしれません。しかし、証拠を確保する前に削除されてしまうと、その後の刑事告訴や損害賠償請求が困難になります。
必ず以下の情報を保存してください。
- スクリーンショット: 画像そのものだけでなく、投稿日時、アカウント名、投稿されたURL、前後の文章(誹謗中傷が含まれていないか)がすべて入るように撮影します。
- URLのテキスト保存: スクリーンショットだけではURLが途切れることがあるため、アドレスバーのURLをコピーし、メモ帳などに貼り付けて保存します。
- 動画の場合: 画面録画機能を使って動画全体を保存するか、URLを確実に控えます。
ステップ2:警察への相談
リベンジポルノは犯罪です。証拠を持参し、最寄りの警察署の「生活安全課」に相談してください。
警察に被害届や告訴状が受理されれば、捜査が開始され、加害者の逮捕や家宅捜索につながる可能性があります。
また、警察からサイト管理者に対して削除要請を行ってもらえる場合もあります(ただし、警察による削除要請は任意のものであり、強制力はありません)。
ステップ3:弁護士への相談
警察は「加害者の処罰」には動いてくれますが、「ネット上の画像の強制的な削除」や「被害者への金銭的な賠償(慰謝料)」までは介入できません(民事不介入)。
画像をインターネット上から消し去り、精神的苦痛に対する賠償を求めるためには、IT問題に強い弁護士への依頼が必要です。
3. インターネット上の画像を削除する方法
リベンジポルノ被害において最も急を要するのが「削除」です。拡散を防ぐための具体的な手段を解説します。
(1) サイト内の通報フォームからの削除依頼
Twitter(X)、Instagram、YouTube、大手掲示板などには、権利侵害を報告するフォームが設置されています。「リベンジポルノ」「プライバシー侵害」などを理由に通報します。
- メリット: 費用がかからず、手軽にできる。
- デメリット: 運営側の判断に委ねられるため、必ず削除されるとは限らない。対応に時間がかかる場合がある。
(2) 送信防止措置依頼
サイトの管理者や、サイトが利用しているサーバー会社に対し、法律に基づく「送信防止措置依頼書」を郵送し、削除を求めます。
- メリット: 法的な手続きであり、フォームからの通報よりも重みがある。
- デメリット: 相手方に意見照会を行う期間が必要なため、即時削除が難しい場合がある。
(3) 裁判所の「仮処分命令」申し立て
緊急性が高いリベンジポルノ事案において、弁護士が多く用いる強力な手段です。
通常の裁判(訴訟)には時間がかかりますが、「仮処分」という手続きを使えば、数日から2週間程度という短期間で裁判所から削除命令を出してもらうことが可能です。
日本の裁判所の命令が出れば、国内外を問わず多くのサイト管理者は削除に応じます。
4. 犯人を特定する「発信者情報開示請求」
加害者が「元交際相手」だとわかっている場合でも、相手が「自分はやっていない、アカウントが乗っ取られた」としらばっくれる可能性があります。
また、匿名掲示板や捨てアカウントで投稿され、誰が犯人か確証がないケースもあります。
こうした場合は、客観的な証拠として投稿者を特定する「発信者情報開示請求」を行います。
特定までの流れ
- コンテンツプロバイダ(サイト管理者)への請求
サイト管理者から、投稿に使われた「IPアドレス」と「タイムスタンプ」の開示を受けます。 - アクセスプロバイダ(通信会社)への請求
IPアドレスから判明した通信会社(携帯キャリアやプロバイダ)に対し、その時間に接続していた契約者の「氏名・住所・電話番号」等の開示を求めます。
5. 損害賠償(慰謝料)請求の相場と範囲
加害者が特定できた、あるいは元々判明している場合、民事上の損害賠償請求を行います。リベンジポルノは被害者の尊厳を著しく傷つける行為であり、一般的な名誉毀損よりも高額な慰謝料が認められる傾向にあります。
慰謝料の相場
リベンジポルノ被害の慰謝料相場は、100万円〜300万円程度となる傾向にあります。
これはあくまで目安であり、以下の要素によって増額される可能性があります。
- 画像の過激さ: 性器が露出している、性行為中の動画であるなど。
- 拡散の範囲: 誰でも閲覧できる状態で拡散されたか、知人・職場に送りつけられたか。
- 悪質性: 削除要請を無視して投稿を繰り返したか、脅迫を伴っていたか。
- 被害者の属性: 未成年者である場合などは精神的ダメージが大きいと判断されます。
請求できるその他の損害
慰謝料(精神的苦痛への賠償)以外にも、被害回復にかかった以下の費用を請求できる場合があります。
- 調査費用: 犯人特定のために要した弁護士費用や調査費の一部。
- 弁護士費用: 訴訟になった場合、認容額の1割程度。
- 休業損害: 精神的なショックで仕事ができなくなった場合の減収分(診断書等が必要)。
6. 加害者が「未成年」や「外国人」の場合
加害者が未成年の場合
最近では、未成年者同士の交際トラブルによるリベンジポルノも増えています。
加害者が未成年の場合でも、責任能力(事理弁識能力・おおむね12歳前後以上)があれば損害賠償請求は可能です。
ただし、未成年者本人に支払い能力がないケースが多いため、親権者(親)に対して監督義務違反を理由とした損害賠償請求を検討することになります。
運営サイトが海外の場合
リベンジポルノの温床となりやすいアダルトサイトや動画共有サイトの多くは、海外にサーバーを置いています。
「海外サイトだから削除できない」と諦める必要はありません。日本の弁護士であれば、海外法人の登記を取得し、翻訳文を添付して現地の法律や条約に基づいた手続きを行うことで、削除や開示請求を成功させている実績が多数あります。
7. リベンジポルノ被害を弁護士に依頼するメリット
リベンジポルノ被害は、一刻を争う事態であると同時に、被害者にとって極めてデリケートな問題です。弁護士へ依頼することで、以下のメリットが得られます。
(1) スピード解決による拡散防止
インターネット上の情報は、コピーされて転載されるリスクが常にあります。弁護士は、仮処分などの法的手段を駆使し、最短ルートでの削除を目指します。
(2) ログ保存期限との戦いに勝つ
犯人を特定するための通信記録(アクセスログ)は、携帯キャリアなどで3ヶ月〜6ヶ月程度しか保存されません。個人で対応していると、手続きに手間取っている間にログが消え、犯人が特定できなくなる恐れがあります。弁護士はログの保存を求める仮処分を先行させるなど、証拠隠滅を防ぐ措置をとります。
(3) 精神的な負担の軽減・二次被害の防止
ご自身で削除請求を行う場合、何度も自分の性的な画像を目にしたり、詳細な状況を説明したりする必要があります。弁護士に依頼すれば、手続きのすべてを代理で行うため、画像を見る回数を最小限に抑えられます。また、加害者との直接交渉も弁護士が行うため、脅迫されたり、言いくるめられたりするリスクも回避できます。
よくある質問(Q&A)
Q:自分の顔は写っていませんが、体の一部やホクロなどで特定されてしまいます。削除できますか?
可能です。
顔が写っていなくても、前後の文脈、身体的特徴、部屋の背景、所持品などから個人が特定できる場合(「同定可能性」といいます)、権利侵害として削除や損害賠償が認められるケースは多々あります。諦めずにご相談ください。
Q:相手が「同意の上で撮ったものだから公開してもいいと思った」と言っています。
通用しません。
撮影に同意したことと、それを公開(公表)に同意したことは全く別の問題です。「撮影の同意=公開の同意」ではありません。同意なく公開すれば違法となります。
Q:お金がないので弁護士に頼むか迷っています。
法テラスなどの利用も検討できます。
資力要件を満たす場合、法テラス(日本司法支援センター)の民事法律扶助制度を利用して、弁護士費用の立替払いを受けることが可能です。まずは相談時に費用の不安についてもお伝えください。
まとめ
一人で抱え込まず、専門家に助けを求めてください
リベンジポルノは、被害者の人生を狂わせかねない卑劣な行為です。
しかし、決して「消せない」わけではありませんし、「泣き寝入りするしかない」わけでもありません。
日本の法律と裁判実務は、被害者救済のために日々進化しています。
適切な法的措置をとることで、画像をネットの海から削除し、加害者に社会的・経済的な制裁を与えることができます。
弁護士法人長瀬総合法律事務所では、リベンジポルノを含むインターネット上の権利侵害問題に対し、専門チームが迅速に対応いたします。
被害者の方のプライバシーには最大限配慮し、秘密厳守で相談を承ります。
「誰にも知られたくない」というお気持ちは十分に理解しておりますが、一刻も早い解決のために、まずは勇気を出して当事務所にご連絡ください。あなたの平穏な日常を取り戻すために、全力を尽くします。
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